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 花冷え
「新装版 御宿かわせみ」より  (平岩弓枝著:文芸春秋刊)
先月もたくさんご参加くださって、ありがとうございました。
本題の捕物とともに、麻太郎くんの初登場となった「秘曲」は、忘れられない一編でしたね。私の拙い「妄想話」にもお付き合いくださって、ありがとうございました。

さて今月は、「花冷え」を選びました。

言わずと知れた初期のお話で、東吾さんとるいさんはもちろんラブラブ♪
妬いたり妬かれたりと可愛いものです。
またこれは、深川の長助さんが初めて登場したお話でもあります。

さあ、今月はどんな五七五になりましたでしょう。
(平成十七年三月)

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
欠席してしまったすみれです。
花冷え、皆様のすばらしい五七五、拝見しました。
二週間ほどPCをのぞく暇もなく、久しぶりに 見てみれば、
ものすごいことになっていますね。感嘆のため息しか出ません。
未だ時間も余りとれませんので
そのうちゆっくりと読みなおすことにします。
(すみれさん)
暖かいと思って温度計見たら「6度!おお!ぬっく〜!」 と
もうすっかりカラダは東北人のゆいです。主人は腹冷えしております(汗)。
「花冷え」、せつないお話でしたよね、皆様のお句を拝見して思い出しました。
あれは粋だの気っ風が良いだの、そういうのを全面に
出されることの多い辰巳芸者の違う一面、
あるいは真実を描こうとしたものなのかもなぁ、と思いました。
ああいう悲しい話は吉原の方を連想してしまうんですが、
やっぱり辰巳もそうなんだ、とあの話で知った次第です。
そしてすっかり忘れてましたけど、長助親分初登場の回だったのですね〜。
(ゆいさん)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇





 TERAIさんの五七五 

「初代かわせみ」は本当に原作に忠実に作られていますね。「初代」のキャステイングを思い浮かべながら作りました。
 (UP後に)
「花冷え」に限らず、私はつい原作の言葉を持って来て句にしてしまうことが多いのですが、それにひきかえ皆様はイメージを膨らませるのがお上手で、今月も堪能させていただきました。
(TERAIさんの談)

「お好みがあったら、今の中にこいつに耳打ちしておいてくれ」
さりげなく耳許へささやく。宴果てて後、ここへ泊る場合の敵娼のことである。
「俺はいい」
東吾は苦笑した。つい先だって、るいに焼餅をやかれたばかりである。
「花冷え」より
   
敵娼はと 問われて焼餅思い出す
   
深川の お方はといひ 腕つねる
   

るいさんの目の届かない所まで及ぶ「焼餅の威力」、可笑しいですね。
この頃の東吾さんてまだ初心〜って感じですねぇ。るいさんも素直に(?)焼餅が焼けて、ままごとの夫婦のような可愛らしさがありますね。
(蛍さん)



   
緋毛氈 雛人形と 病み上がり
   
外泊を 禁ずといわれ 飛んでゆく
   

だいたい、「禁ず」と言われるとやりたくなるものですよね。千姫さまの「奴だこ」のお句とあわせて、かわせみに向かって飛んでいく東吾さんの姿が目に浮かんできて楽しいです。
(麦わらぼうしさん)



「かわいそうに、おっ母が悪い、堪忍してくれよ。お前にゃ本当にすまないと思ってるんだよ」
母子は抱き合って声をあげて泣き、岡っ引は苦い顔をして源三郎をみた。
「花冷え」より
   
母子とも 抱き合いどうする 巻羽織
   

まったく、苦りきった源さんの顔が見えるようです。



「それにしても奇妙なことをいっていたな。お袋が娘を一人前の芸者にするためにかかりっきりで、弟のほうをかまってやれなかったからぐれたとかなんとか……」
  (略)
「なんで、そんな差別をしたんです。どっちもお腹を痛めた子なんでしょう」
「花冷え」より
   
二人とも 腹痛めたとは いいながら
   
河豚の毒 これも愛情 母の愛
   

どっちもお腹を痛めたといっても同じように可愛いとは限らないのですよね。いくら厄介者でも、殺すかな〜。母が助けたかったのは千代次さん、「母の愛」でも千代次さんを助けたいという千代次さんへの「母の愛」と読んでしまう蛍はへそ曲がりかな…。
(蛍さん)



「おい……そうなのか」
東吾がいくらか緊張して、るいの肩を掴んだ。
「花冷え」より
   
お守りと 聞いてまさかと 肩を抱く
   

「肩を抱く」なんて…、TERAIさまも段々感化されてきましたね〜。(笑) でも、まだふたりは忍ぶ仲ですし、るいさんにとっては父無し子を産むことになるのですよね。
(蛍さん)



   
父親の ない哀しさに 夜は冷え
   

千代次さんばかりか、るいさんにも当てはまりますね。「夜は冷え」に女の業の哀しさを凄く感じました。
(蛍さん)



 麦わらぼうしさんの五七五 

先月の「秘曲」よりは気持ち的に楽だけど…でも、哀しいお話ですよね、今月も。「秘曲」は舞の伝授の場面が、絶対競作ポイント!と思ったけど、今月はどこなんでしょう?やっぱり河豚かな?みなさまがどこを詠まれるか、楽しみです〜!
 (UP後に)
今回の競作ポイントはタイトルずばり「花冷え」だったのですね! 気づかなかった自分が情けない…気づいたとしても詠めなかった だろうけど… いつもながら、みなさまの読みの深さに感服です。
(麦わらぼうしさんの談)

「場所柄、出前が多いんです。今頃になると客も敵娼も腹が減る。女の部屋で食う蕎麦の 味は、なかなか乙なものらしいですよ」
「花冷え」より
心も満腹、腹も満腹、さぞかしいい夢が見れることでしょうね
   
白粉と 蕎麦の香りで 夢枕
   

この手の話を、東吾さんが源さんに教えてもらうというのも、面白いですね。
夢枕という言葉がいいですね。
(TERAIさん)
女の部屋で云々て、そりゃ〜まるで東吾さんじゃぁないですか。(笑)自分のことを言われているみたいで、東吾さん、背中が痒かったりして…。
(蛍さん)



兄が皮肉をいっているのかと東吾は疑ったが、通之進の様子は自然で、作為を感じられる節もない。
「花冷え」より
この時、通之進さまは本当に何も知らなかったのでしょうか?知っていてその上で、知らないふりして言ったのかな、とも思えるのですが…みなさまは、どう思われますか?
   
なにもかも お見通しだぞ 弟よ
   

この時期の兄上は、まだご存知ないのじゃないかしら。
私はこの頃には知っていたのではないかな…と思っています。東吾さんと るいさんの中を遠まわしに応援しているように感じています。二人の心の重荷を少しでもおろしてあげたいという親心ならず兄心かな…。まぁ、東吾さんはそれをいいことにセッセと通ってしまうチャッカリですが。(笑)
(蛍さん)
やはりみなさまの中でも、意見がわかれるのですね。この部分、素直に読めば、まだ知らなかった、と思えるし、いや、あの兄上さまのことだから、すでに知っていた、とも思えるし。う〜ん、いつから知っていたんだろ〜
(麦わらぼうしさん)
私も“知っていた”に一票(笑)
(紫陽花さん)



千代次が必死で叫んだ。
「あたしは若旦那の子供を……」
岸の上で男がふりむいた。
「笑わせちゃいけないよ。お前の客は俺一人じゃないんだ……」
「花冷え」より
岡場所に通う男なんて、みんなこんなもんだと思いますけど、やっぱり腹がたちます!木島屋の倅!
   
甘い時間(とき) 過ぎてしまえば 鬼の顔
   

東吾さんもよく遊んだとかの記述がありますよね。お上が率先してそうゆう場所を提供しているのですから、お江戸の時代の女性に対する感覚って、この若旦那みたいな人間が多かったのでしょうねぇ。イエイエ!東吾さんがではないですよ〜。
(蛍さん)



娘が、はじめて男に惚れ、その男の子をみごもったと知った時、娘が男に捨てられながら、男を忘れかねているとわかった時、母親は追いつめられた。娘の幸せの障害になる息子をどうにかしなければならない。
どちらも自分の腹を痛めた子であった。
「花冷え」より
千代次も定吉も自分の子。一人の子の幸せのために、もう一人を殺して共に死ぬ…お勝には、こうするほかなかったのでしょうか…これも、親の愛、なんですね…
   
生かすのも 共に死ぬのも 親の愛
   

麦さまの言葉ではないですが「うま〜い」です。
(TERAIさん)
「娘の幸せの障害になる息子をどうにかしなければならない」このお話で一番引っかかっている部分です。息子の仕合わせはどうでもいいのかい!(怒)
(蛍さん)



「泣くのは女だけじゃないのか。女をあやつって甘い汁を吸っている奴は、取締りの網にはかかるまい」
「花冷え」より
岡場所に限らず、泣きを見るのは、いつも弱い立場の人々…むむむ、また腹が立ってきました!
   
悪の花 おんなの涙で 咲き誇る
   

ハハハ…、麦さま怒りっぱなし〜。でもねぇ…、東吾さんはそう言って腹を立てていますが、自分だって、長崎の遊郭にしろ吉原にしろその恩恵(?)にあやかっているではないですか〜。岡場所を取り締まってくれ〜とお上に訴えるのは、大抵その吉原ですからねぇ。岡場所は吉原に比べて、ずっと安い金額で遊べますから、岡場所にお客を取られてしまうのですよ。その吉原から膨大な今で言う税金をもらっているお上の一員の東吾さんですから、「泣くのは女だけじゃないのか」と言う気持ちもわからなくはないのですが、な〜んか説得力に欠けるような気がしますぅ〜。(これだから蛍はいけないのですよね…)そんな理屈はいいから、もっと素直に読め〜と石が飛んで きた〜。(笑) あっ、麦さま、御免なさい。麦様のお句への感想には全くなっていませんでした。(-_-メ)
(蛍さん)
いえいえ、蛍さま、いつもとても丁寧な感想、ありがとうございます。 そうか〜東吾さんも恩恵を受ける側でもあるのですね〜目からウロコです〜 確かに、さんざん遊んでいる東吾さんに言われても説得力ないかも…真面目な源さんならいざしらず…でも、東吾さんよりは苦労をしていて、いろんな事いろんな人を見てきている源さんは、そんな単純なものではない、とわかっているから、こんな事は言わないですね。しかし、男たちが吉原や岡場所に通うという感覚、現代にたとえると、スナックやクラブへ行く、ぐらいの感じなのかな〜
(麦わら帽子さん)



 七歩さんの五七五 


「お気の毒さま、それじゃさぞかし深川のお方が恋いこがれていらっしゃることでしょうね」
袂のかげでるいは東吾の腕をつねった。
「深川……?」
「村尾様がおっしゃいました。神林は女に眼をつけるのが早いって……大層、おきれいな方だそうではございませんか」
「花冷え」より
   
おぼろ夜やるいのヤキモチこんがりと
   
辰巳睨むるいと東吾の夫婦雛
   

初期の頃はよく「つねる」場面あり、ドラマでは袂で「ぶつ」場面もありましたが、最近はあまりそれもなく、こんな二人も微笑ましく思います。
「おぼろ夜や〜」の「こんがりと」が七歩さまらしいですね。
(TERAIさん)



   
花冷えや親子の絆も細くなり
   
幸せを河豚に祈った母の毒
   

七歩さま上手い!!「細くなった絆」は母と息子、「仕合わせを祈った」のは娘の、「母の毒」は殺そうと思った心ですね。もやもやしていたものが、スッキリしました〜。
(蛍さん)



「どうするんだ。町方は……この事件を……」
「どうもしませんよ。母親が息子と河豚を食って当った。母親だって死にかけているんです……」
「花冷え」より
   
花散るも粋な裁きの巻羽織
   

苦労人の源さんらしい、裁きですね。
暗い事件を、なんとかいい方向でまとめようとする源さんの姿がよく伝わってきます。言葉のテンポもいいですね。
(麦わらぼうしさん)



 たまこさんの五七五 

むーん、ますます文才・読み巧者ぶりを高めつつある皆様に毎月、苦しみがつのります(・・・と言いつつ、これの無い生活が考えられなくなってきている) もっと推敲を重ねたいところではありますが、えぇーいと送ってしまって忘れることにします(笑)
「花冷え」の話、見当違いかもしれないけれど私は「美空ひばり」さんのことを思い出してしまうんですよね〜。昭和を代表する国民的大歌手と隠れて色を売る芸者を一緒にしては、ファンの怒りを買ってしまうかもしれないけれど、ひばりさんも、「一卵性母娘」といわれたお母さんとの絆が話題になったり、弟さんが警察沙汰を起こして苦労したりしていましたよね。少し前に、ひばりさんの息子さん(実際には甥御さん?)が、叔父さんたちの事も含めて、ひばりさんの思い出を文芸春秋だったかに書いておられたのを読みましたが、身内の事にも関わらず客観的に、率直に書かれていて、なかなか好感が持てました。
 (UP後に)
早速拝見しましたよ〜皆さん、ほんとに中身が濃いですね!!(巻羽織句も、またまた有難うございます) 長助親分の初登場を逃しちゃったのが悔しいな〜。でも、今回、なんとなく宗匠と目のつけどころが一緒だったり、互い違いに詠んでた所(?)があったりして嬉しいです。っていうか、そのぶん差が出ちゃってヒェ〜でもあるんだけどね。昨年の「女がひとり」に続き、女の人生論議的にも盛り上がった一編でしたね。
(たまこさんの談)

上りがまちにるいがすわって、きびきびした調子で応対している。
「あいにくではございますが、今夜のところは、すっかり部屋がふさがって居りまして、お宿致しかねます。まことに申しわけございませんが……」
「花冷え」より
てきぱきと仕事をこなす姿を見て惚れ直す、というのは、女性が男性を見てのことも多いでしょうが、逆のケースも結構あるんじゃないかと思います。東吾さんの前では、しっかり者の経営者から、可愛い新妻に変身する、おるいさんですが・・・
   
仕事ぶり物陰から見て惚れなおし
   
春の宵隠し化粧は誰のため
   

「仕事ぶり〜」の視点、確かにそうかもしれませんね。女将の顔と新妻の顔の落差がまた、たまらないのかも。
(たまこさんの談)の<むーん、ますます〜〜忘れることにします(笑い)>にまったく同感です〜出来ない、難しいと言いつつ、もう毎月の習慣になっています…けっして満足のいく出来ではないけど、えいゃ〜と送ってしまえばもう忘れる…ホントそうです。
「仕事ぶり〜」「春の宵〜」たまこさまのコメント、こでまりさまの感想になるほどです。そして自分だけが知っている素顔のるいさん、というのがまた、東吾さんにはイイのでしょうね。
(麦わらぼうしさん)
東吾さんが「かわせみ」にいないときのるいさんて、キリリとした女将さんなのでしょうねぇ。自分からは会いに行けないし、この頃のるいさんは東吾さんとは一緒になれないと覚悟していましたから、仕事に打ち込むことで心のバランスを取っていたような気もしました。
(蛍さん)



道のすみを千代次が帰って行くところであった。荷を背負い、三味線と提灯をもってついて行くのが母親である。
  (略)
月が朧ろに、海の上に浮んでいた。
「花冷え」より
NHK-BSでの再放送では、文野朋子さんの母「お勝」の演技がとても印象的でしたね。
   
深川や月朧なる三味の音
   
春闇を浮世稼業の母娘行く
   

文野さんは名演技でしたね。特に定吉が肝をはさんだ箸をお勝の口元に差し出し、その定吉の手を己が両手で包んでゴクリと飲み込む表情、本当に印象的でした。
“春闇”という言葉いいですね。私の中での今月の“はっ”とした言葉です。
(蛍さん)
「月朧なる」という表現が素晴らしいです。
(TERAIさん)



東吾は答えてやる言葉がなかった。ただ、るいの肩を強く抱いてやっただけである。
「花冷え」より
これまでにも、物語のタイトル=季語というケースはあったと思いますが今回はとくに、皆さん、「花冷え」をどこで使っていらっしゃるのかというのが楽しみです。私はラストの2人のシーンにしてみました。その前に、お邪魔虫はさっさと帰らねば(笑)。
   
やり場なき怒りをはらみ散る桜
   
花冷えや問はれて答ふ言葉無く
   

たまこさまの読みのとおり、わたしも「花冷え」で一句作ってました。皆さまほとんど「花冷え」で詠まれていたのでは?!すごい読みです。恐れ入りました!
(のばらさん)
題名の「花冷え」が今回はポイントだったのですね〜。内容と題名がピッタリシンクロしていて、私も何とか使いたいと思いました。「花冷え」の季語ひとつにも色々な解釈があって、季語の使い方の難しさを 益々実感しています。
(蛍さん)
「やり場なき〜」このお話を読み終えて感じた事、そう、ずばりこんな気持ちになりました。
(麦わらぼうしさん)
「やり場なき〜」素敵な表現だと思います。
(TERAIさん)
「どうなるんでしょう、生まれてくる赤ちゃん…」とるいさんは言っていますね。もし、東吾さんの子供を宿したら同じなので すね…。世間的には独り身ですし、東吾さんが薄情な男ではないと解かっていても、心細いでしょうねぇ。
(蛍さん)



 こでまりの五七五 

今月に入ると同時にやって来た妄想の神様の起こした嵐、新作「うねうね横丁」に拙作も加えて、わずかの間に五作ものUP!自分のはさて置き、目福目福♪と楽しんでいましたが、はたと気づきました。皆さん宗太郎さんのエピソードに心奪われて、「花冷え」は忘れられてしまうんじゃないかしらと、ちょっとドキドキしてます。お家やご家族の事情から、今月欠席の方もいらっしゃいますが、どうぞまたお遊びにいらしてくださいね。
(こでまりの談)

この恰好を、もし、兄の通之進がみたら、なんというだろうと、東吾はいささか後めたかった。
「花冷え」より
シリーズ二話めの「花冷え」では、東吾さんもまだまだ兄上の目を気にしていますね。それほどこの時代は、身分やけじめに重きが置かれていたんですね。でも縞は派手だよなぁ、縞は。
   
次男坊後ろめたさの縞半纏
   

るいさんは、「かわせみ」に東吾さんが来たときには、着ているものの上から下まで全部着替えさせたいと思っているのですよね。派手だろうがなんだろうが着てくれれば嬉しいでしょうね。この部分を読んだときに思ったのですけれど、縞の半纏などお侍さんが着るものではないですから、町屋暮らしに身を変えたるいさんと東吾さんの身分の差のようなものを感じてしまって、ちょっと寂しかったです。
(蛍さん)



源三郎が案内したのは蕎麦屋だった。
店はあまり大きくないが釜場はかなり奥行きがあり、深夜だというのに、職人が威勢よく働いている。
「花冷え」より
今では欠くことのできない「長助さん」の初登場、やはり一句献じたいと思います。長助さん一家の仲の良さ、商売への姿勢がお店の雰囲気にも表れているようです。
   
さざめきと湯気立つ釜場夜半の春
   

活気あふれる長寿庵の雰囲気がよく伝わってきますね。
(麦わらぼうしさん)
地味な句だと思っていたのですが、「S.ファロウ」トップの畝様人形句に選んでいただきました♪言葉としては「さざめき」と「ざわめき」、どちらがいいかな〜って迷ったんですよ。深川という土地には「ざわめき」の方が合っているんだろうけど、お店の「ざわめき」が釜場には「さざめき」となって伝わっているような、そんな気がしました。「夜」も冬から春になると、何となく空気中の水分が増えてくるというか、釜場の窓から見上げる月も滲んで大きく見えて、お蕎麦を茹でながらでも「春が近いなぁ」とおえいさんや職人さんが感じたんじゃないかしら、と思いました。
(こでまり)
私も畝様句、変わってる変わってるって見てました。勿論お隣のお蕎麦も。長寿庵の釜場の活気が伝わってくるような宗匠のお句ですね。なぜか釜場にいるのはおえいさんと息子の長太郎さんとおさとさんが浮かんできます。長助親分はきっとまた御用で走り回っているんでしょうね。
(あっちの管理人さん)
地味じゃないですよー、私も大好きです、この句。読んですぐ、情景が浮かんで来て、大好きになりました。さすがたまこさん、お目が高い!
(千姫さん)
「夜半の春」は、アップされた時から「いただき!」と目をつけていました。「ざわめき」と「さざめき」で推敲されていたとは気がつきませんでしたが、「霞」も「朧」も言葉は使っていないけど、釜場の湯気から流れるように春の夜のしっとりした情景につながって、賑やかさがそれに溶けこんでいくような味わいの出ている名句だと思います。
(たまこさん)
「さざめき」の推敲のお話も興味深いです!!そういえば推敲裏話もすごく参考になるかも〜。「ここに、ぴたっと決まる言葉は何か〜〜」と迷ったり探したり推敲したり、苦しいけどこれだ〜、というのが決まるとうれしいですよね。 これからお蕎麦ゆでるたびに(?)、ついつい思い出す句かも〜〜。
(のばらさん)
過分なお言葉、どうもありがとうございます。目だたない句だと思っていたので、そんなに言ってくださってビックリしました。結果はともかく推敲って楽しいですよね。最初に作ってからだいたい一、二日すると別の言葉が出てきたりするのですが、その瞬間が実は好きなんです。パッと雰囲気が変わる時もあれば、廻りまわって元に戻ることもありますが、その過程が好きなんです。
(こでまり)
たまこさまの眼の付け所、宗匠のこだわり、どっちもステキです〜。推敲のお話も面白くって…。「さざめき」と「ざわめき」か〜。長寿庵なら、深川なら、私も「さざめき」です〜。釜場のあわただしさや活気の向うに花街の華やぎ・街のにぎやかしさに、少しベールがかかる感じですかねぇ?
(はなはなさん)
私は咄嗟に蕎麦=越前と思ったのですが、長寿庵は蕎麦屋でしたね(「初代」のうどん屋のイメージが・・・)。
(TERAIさん)



寄り添って行く母娘、お職をはっただの辰巳の姐さんだのと呼ばれた二人ですが、並んで歩く場面は物悲しいですね。
   
月朧深川帯の揺れて行き
   

「揺れて行き」にもの哀しさが溢れていますね〜。親のために身を売るのは当時では「孝子」と言われて褒められたそうですが、それに甘んじなければならない境遇も哀しいです。
(蛍さん)



まだ、るいが八丁堀同心の娘のあった時分、雛を飾ったからみに来いといわれて出かけて行ったことがある。まだ、兄も妻帯して居ず、東吾にとって華やかな雛壇は物珍しかった。
「花冷え」より
これは東吾さんが庄司家の雛祭りを思い出している場面からですが、どなたにも何か、雛祭りの思い出ってあるのでしょうね。
   
遠き日の白酒あられ緋毛氈
   

お雛さまを飾るときってウキウキしますね。蛍の子供の頃は、父が飾ってくれるました。これは何、これは何とひとつひとつ名前を教えてくれました。『左近の桜、右近の橘』思い出しながら、今は娘のお雛様と自分のを並べて飾っています。お雛さまは、そのひと一代限りのものなので、遺してはいけないのだそうですね。いずれ、片付けなければとは思っているのですが、父親っ子だったものですから、父との思い出をなくしてしまうのも寂しい気がします。
(蛍さん)



たまこさんがお見通しでしたが(↑)、私も「花冷え」で一句作っていました。同じくラストの場面ですが、この違いも面白い!
   
花冷えや爪びく三味の遠音聞く
   




 紫陽花さんの五七五 

「花冷え」の五七五送ります。今日(13日)は静岡でも寒く、それこそ「花冷え」の一日でした。全国的に雪もかなり降ったようですね。
(紫陽花さんの談)

行った先が水天宮の境内で、桜が三分咲きである。
社殿で長いことおまいりしてから、るいは安産のお守りをもらいに行くという。
「花冷え」より
るいさんも千代次さんもいろいろな思いがあるのでしょう。
   
桜咲く水天宮で願いしは
   

実は新装版では「水天宮→富岡八幡」と変更になっていました。でもここはやっぱり、水天宮の方がピンときますね。
えぇ〜!新装版では富岡八幡になったのですか。私もやっぱり、安産といえば水天宮の方がピンとくるなぁ。
(麦わらぼうしさん)
えっそうなの?どうして変更になったんでしょう。私も水天宮のほうがいいと思うなぁ。
(紫陽花さん)
安産の神様って言ったらやっぱり水天宮さまだと思うのですがねぇ…。舞台が深川なので、富岡八幡に変更になったのでしょう か。若旦那に嫌われてしまって、それでも若旦那の子供が無事に生まれてきますように…。千代次さんの願いが切ないです。
(蛍さん)



河豚は間違いなく、お勝が料理をして定吉と二人で食べたものとわかった。
近所の魚屋がお勝に河豚を売り、お勝は昨夜、千代次を妓楼へ送り届けてから家へ帰り、待っていた定吉と晩飯を食べた。
「花冷え」より
   
母親の愛情こもった河豚の鍋
   




最後の一句は湯飲みが詠みました。千代次さんのことを詠んだのかと思いましたが、自分のことかもしれません。
   
三味線の絃を張り替え気合入れ
   



こいつらいったいなにやってんだろう。
              すごい不気味だ…
絃を張り替えるという視点、いかにも千代次さんが新しい人生を始めるのにふさわしい視点だと感じました。湯呑み、恐るべし…。いな、紫陽花さんと言うべきか…。
紫陽花さんところの湯呑み君まで一句詠んでいて最高!
(あっちの管理人さん)
湯のみ君の一句も素晴らしい!3人組の活躍もますますパワー全開で(この3人組の盛り上がりを知ったら、お屋敷のチビ姫が黙っていないのじゃないかな?)
(たまこさん)
湯飲み君のお隣はお茶たく君ですよね〜。たまらん〜〜(^▽^)!かわいいです〜〜。
(のばらさん)
もののけトリオの面々は楽しそうだなぁ〜。お座敷の片隅できっと誰にも知られないで踊っているのね。
(はなはなさん)
茶たく君も一句詠んだということで相変わらず素敵なトリオですね
(ぐりさん)
紫陽花さまのイラスト、今回もサイコー!この二人、もうはいくりんぐには欠かせないキャラですね。
(コシキブさん)

紫陽花さまのイラストには、初めギョッとして次には爆笑でした〜。茶托くんがいない…、着物着てる〜。いつもいつも奇抜なアイデアに楽しませていただいています。湯のみ君に三味線の特技があったとは、御見それしました〜。
(蛍さん)
ざっと見ただけですが、思い入れがたっぷりの皆さんのお句のなかでいつもに増して妖しいもあいつ等は雰囲気ぶち壊しでこころ苦しいです。 踊るは旅立つ方々への「送別の舞い」だそうです。どこがどう送別なのか私にはわかりませんが…
(紫陽花さん)
いろいろあったけど、千代次さんには、このお句のように新たな気持ちでこれからをがんばってもらいたいです。イラスト拝見して、なぜか「ディープ・パープル」の「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のイントロが響いてきました。三味線でハードロック!?「違います!」 という紫陽花さまの声も聞こえてきました…すみません…
(麦わらぼうしさん)
湯のみ君と茶たくくんの動きが絶妙ですね(狐火君も)。
(TERAIさん)



 のばらさんの五七五 

今月の「花冷え」はなんだかお話にどっぷりひたって漂いながら、言葉がぷかりぷかりと浮いてきたのを拾った感じです。言葉の響きにおぼれないように〜〜と心がけたつもりですが、どうでしょう。どうしようもない、やるせないお話のなかにぽつんとたたずんでいる千代次の姿が見えてくるようでした。
 (UP後に)
拝見してきました〜〜♪すいません(^-^;)投句数を持ち上げたひとりです。わはは。皆さんの前書きもいつもながら興味深くて、一通り読んできたのですが頭がいっぱいでまだ味わいきれてないです。
(のばらさんの談)

尾花屋の座敷から海がよく見える。昼だと沖を行く白帆や陽の光る蒼海原が果てしなく見渡せるそうだが、夜は波の音と潮の香と、やがて上る月が御馳走であった。
仲間の中にこの土地に顔のきく遊び好きがいたとみえて、座敷へ来た芸者達はいずれも美しい若い女で、芸も達者ぞろいであった。
「花冷え」より
華やかな宴席のこの場面があることで、なお千代次さんの姿が立体的に浮かび上がってくるように思いました。本歌取り風(?)にしました
   
春の夜のうたかた綺羅を惜しみなく
   

華やかな宴席で、千代次のまわりだけに静かな空気が流れているような感じですね。今回「綺羅」という言葉を初めて認識しました。
歳時記の他にも句作の参考にしている本があって、『自然のことのは』(幻冬社)という本も気に入ってる一冊です。「綺羅」という言葉もその本から見つけました。情けないんですが(^-^;)言葉に詰まったらとりあえず当てにしてしまう本です〜。
(のばらさん)
あれ、原作から取ったと思っていました。
(こでまり)
「綺羅」という言葉素敵だと思います。
(TERAIさん)



その中で、仲町は芸妓の数も多く、それとても、いわゆる二枚証文が多く、客にのぞまれれば色を売るのが常識のようになっていた。もっとも、中には芸一本の妓もいて、それが辰巳芸者の気っぷのようにもてはやされたりもした。
「花冷え」より
芸に精進してもその身は買われる。そうして男に抱かれることに千代次さんは溺れることはあったのかしら、人形が抱かれるようにふと、男の肩越しに別のところを見ていたように思いました。
   
目を開けたまま抱かれをり月おぼろ
   

う〜ん、のばらさんらしいですねぇ。
千代次さんに限らず、身を売る女の気持ちって、こんなだったのかも。そういう気持ちに着目されたのばらさま、すごいです。
(麦わらぼうしさん)
のばらさんの独特の表現ですね〜。お江戸の時代は自分ではどうにもならない女性が多かったですね。「抱かれをり」に、自分の心を殺さなければならない身の遣る瀬無さを感じました。
(蛍さん)



芸に精進するというある種の気迫というよりはそうするしかない諦めも感じられてしまうのです。朧月夜のうっすらした自分の影に「あんた、だれ?どこにいきたいの?」とぽつんと聞いているような、千代次さんを妄想。
   
連れ歩く影に名を聞く月朧ろ
   

この場面は外から見た二人を詠んだお句が多い中、千代次さんが自問しているという視点なんですね。



河豚を買い、息子を殺すために料理しながら、自分も毒を含んだ肝を口にしている母親の心情があわれだった。
「花冷え」より
お勝は定吉には手も目もかけずにほったらかしだったようなので、乳幼児のころもちゃんとお給仕して食べさせてもなかったかもしれない。そんな我が子に最後に毒を喰わせながら、そして自分も一緒に食べながら、まだ二人の子が小さかったときの様子を思い出しはしなかったかと思いました。
   
越し方を口元に見つつ物喰はす
   
暴れ川落花呑みこみ海へ果て
   

ふたりとも腹を痛めて産んだ子なのにねぇ。ずっとほったらかされた定吉さんが、母親の手作りの料理は嬉しかったと思います。短い定吉さんの人生の最後が、母が作った毒入りの料理というのは哀し過ぎますね。
「落花呑みこみ」ってまだまだこれから一杯花を咲かすことが出来る定吉さんの終焉のような感じがしました。
(蛍さん)



しずかな夜なのに、東吾の耳には三味線の音色がきこえてくるようであった。
「花冷え」より
命が芽吹く季節、ふぐも春に産卵しますし千代次のお腹にも命が。強く育って欲しいと思います。千代次さん、このあとどうしたのでしょう。羽織でお腹をかばいながら、三味線を弾き、芸者をつづけていくしかなかったのでは、と思いました。
   
忘れ貝拾うてまた明日三味を弾く
   
花冷えや萌ゆる命を手で包む
   

「花冷えや…」千代次さんが、お腹に手をあてて、寒くない?大丈夫?って聞いている様子が目に浮かびます。
(紫陽花さん)
ご一緒でしたね〜。蛍はるいさんの願いの宝貝と表現してみました。のばらさんは千代次さんの願いですね。女性にとって丈夫な子供を産みたいって一番の願いですね。これから生まれて来る命は、まさに「萌ゆる命」ですね。
(蛍さん)



 コシキブさんの五七五 

さて、今月の「花冷え」ですが、なんとか数句絞り出すことが出来ましたので、提出させていただきます。このお話は花街に生まれた女の哀しい運命がテーマで、五七五初心者の私には重たすぎ〜。でも初期の「かわせみ」の文体は懐かしく感じられましたし、何よりるいと東吾が初々しいですね!元祖ドラマでも印象に残っている作品の一つなんです。
 (UP後に)
今月は初期のお話だったので、最近作を読みなれている私にとっては文章的にもなつかしい世界でした。タイトルからして「花冷え」というステキな季語だったし。そっか!これ使ってよかったんですよね。今頃気がつく わたしって…。本当に今回は数が多くて大変だったと思います。…実は私も最初は3句のみ提出する予定だったのですが、送信する段になって「あ、あれも送っちゃえ!」「これも!」と頭になんとなく浮かんでいたのまで提出してしまい、増えてしまったんですー。「巻羽織句」に挑戦したかったんですが今回はできませんでした。この次までの宿題にします。
(コシキブさんの談)

東吾は立ち上った。着流しに、るいが仕立ててくれた派手な縞物の半纏をひっかけているところは、どうみても八丁堀の吟味方与力を兄に持つ男には見えない。
「花冷え」より
東吾さんファンにはそれこそ石を投げられそうですが、この格好はまるで「吉原の居続け」みたい!でも東吾さんは案外それを気取っているのかも、と思ったんです。「女の部屋に居続けさ。」なんて。でも実は女は女でもお堅い元・お武家の女。遊女屋ではなく大川端の宿屋なんですけどね。
   
居続けを気取る与力の次男坊
   

いいです〜!私は拍手喝采ですよ〜コシキブさま〜(そんな私に石が飛んできそう…)
(麦わらぼうしさん)
居続けの上に鼻の下を伸ばして〜ですね〜。(ヤバッ 笑) るいさんが東吾さんの世話をしたくてたまらない気持ちもわからなくはないのですが、ちょっと甘やかし過ぎなのでは…。(逃げろ〜っ)
(蛍さん)



「たいした貫禄だな」「すっかり女主人が板についた」なんて東吾さんはからかうけれど、やはりるいは「素人の女」。こんな初々しいしぐさには、またまたそそられてしまうのでは〜。
   
ぎこちなきしぐさも愛し君ならば
   

「愛し君」…な〜んて甘い響きなのでしょうねぇ。るいさんは女将としての顔と東吾さんの前での甘〜い顔があり ますが、東吾さんてキリリとしている時ってあるのかな〜。(うわっ、岩が…)
(蛍さん)



次の間では、兄の嫁の香苗が雛の道具を出して飾りはじめている。
「少しはお気が晴れますでしょう」
「花冷え」より
明るい日差しが病間に差し込んで、緋毛氈の色が顔にうつっている様子です。香苗さ んの心遣いは流石ですね。
   
雛飾る妻の横顔朱が映える
   

「朱が映える」がとてもいいですね。情景が具体的に浮んでくるようです。
“朱が映える” 私もいいなぁと思いました。
(紫陽花さん)
「朱が映える」私もこの間朱漆の作品(「夕映蒔絵盆」)を作ったので別な意味で感慨深いです。
(TERAIさん)
お雛さまを飾っている香苗さまを通之進さまがご覧になっているのでしょうか。通之進さまも内心では香苗さまのことを 『綺麗だなぁ…』なんて思っているかも…。「朱が映える」に、通之進さまの視線を意識して、頬を染めている香苗さまの可愛らしさを感じました。
(蛍さん)



「東吾は庄司どのの娘を知っていたな」
突然、兄に呼ばれて東吾はどきりとした。
  (略)
兄がなにも気づいていないのだと、申しわけないが、るいのところへ行く大義名分がこれで出来たようなものである。
「花冷え」より
これは東吾さんのジレンマですね。るいは好きだけれど、親同然の兄に心配をかけたくない。実際、部屋住みの身では生活力もないし、るいと結婚するなんて無理。今しばらくはこの状態でいるしかない、辛い立場なんですよね。東吾さんはお兄さん思いでもありますし。逆に嫌なお兄さんで、二人に確執でもあればまた違ってきたのかもしれませんが。
   
想えども今は語れず兄の前
   




「捨てないで……」
ひいと泣きながら、女が男にしがみついたらしく船が揺れ、男が女を叱りつけた。
「花冷え」より
こういう花街に生きる女性の運命をどう表現すればいいのかを悩んでいたときに、「薄氷(うすらひ)」という言葉を見つけました。春の季語だそうです。ちょっとありがちな表現かな、とは思いましたが、寄る辺なき人生を表す言葉として使わせてい ただきました。
   
薄氷(うすらひ)を踏みて女の夜は深し
   

「薄氷」は、切羽詰った千代次さんの立場を、とてもよく表していると思いました。



「定吉は母親から銭をもらい、河豚で酒を飲んだ勢いで、どこかの賭場へでも行くつもりだったんでしょうな。 (略) 我が子が死ぬのを目前にみる気はしなかったんでしょう」
「花冷え」より
この場面、ドラマでも哀しかったです。何も知らずに母とのご馳走を喜ぶ定吉。覚悟の表情で河豚を飲み込む母。共に死のうとしても、やはり最期は見るに忍びない。賭場に送り出すときの心の叫びを想像してみました。
   
ひとりでは往かせぬからと背をおくる
   

千代次さんのためには邪魔な定吉さんですが、我が子には違いないですし、殺そうとして調理した河豚を食べさせるのは忍びなかったでしょうねぇ。自分も一緒に死んで行くのは、その贖罪なのか、遺された千代次さんのためには、母が殺人者にならないための覚悟なのか…。心の中で手を合わせている母であってほしいです。
(蛍さん)



千代次さんはきっとこの先も淡々と生きていくのではないかな、という気がして。男に捨てられ、母と弟が心中しても、岡場所ではそんな事情をかかえた人はたくさんいるのだから、誰に愚痴るわけにもいかない。雪割草も春の季語なんですね。雪を割って咲く花。そんな強さを辰巳の女は持っていると信じたいです。
   
いのち生き運命(さだめ)うらまぬ雪割草
   

「雪割草」と辰巳芸者の気っぷ、こちらの季語もよく響き合っていると思いました。



 千姫さんの五七五 

三月なのに寒い日が続いています、お変わりありませんか。私は元気です。が、寒くて血のめぐりが悪いようです(いつもの事じゃん〜)、あはは
(千姫さんの談)

「東吾に外泊を禁ずる、そなた、厳重に見張るように……」
「兄上……」
  (略)
兄が出仕するのを待ちかねて、東吾はるいの許へとんで行った。
「花冷え」より
「花冷え」の通之進の言葉は私のお気に入りです。この場面をどうにか五七五にしたいと随分詠んでみたのですが、どれも今一つ。無しにするのはもったいないから、なんとか言葉だけをつなげて残しました。(ので、ちょっと意味不明かも・・・)でもここは「元祖かわせみ」では、ちょっと東吾とるいには辛い場面でしたねぇ・・・
   
奴だこ かわせみに飛ぶ 良い風は 謹慎の沙汰 どこ吹く風よ
   

ここは本当に可笑しいですね。ホント、糸の切れた凧みたい。
私もこの時の通之進さまの言葉、好きです。意味不明だなんて、そんな事ないですよ、かわせみに向かって飛んでいく東吾さんの姿が見えるようです。
(麦わらぼうしさん)
東吾さんていかにも糸の切れた凧って感じですねぇ。「どこ吹く風よ」なんて、ちゃっかり者の東吾さんを上手く言い表していると思いますよ〜。蛍も、通之進さまのジョークは大のお気に入りです〜。
(蛍さん)



「みていなければ、女は好いた男と媾曳をしただけといい抜けます。惚れた同士がかくれて逢ったのを、一々、とがめだてするほどお上は野暮じゃありませんからね」
東吾はるいを眺めた。るいは赤くなってうつむいている。
「源さん、その話はよしにしよう。どうもあっちこっちにさわりがありそうだ」
「花冷え」より
源さんらしい五七五が出来ました(スト・ファの看板狙いです!) 御宿かわせみ二作目なのにもう、源さんは生真面目な同心で、東吾とるいには野暮天で邪魔虫、って性格が出ているのがおかしいです。
   
野暮と言う 野暮に気づかぬ 巻羽織
   

これ、いいですね!すぐに看板になるでしょうね。
うま〜い!まさに源さん!というお句ですね。
(麦わらぼうしさん)
(看板になりましたが、)「野暮」と二つ続けて出てくるところがいいですね。
(TERAIさん)



「そうなら嬉しいんですけど、そうじゃありませんから、御安心なさいまし」
「馬鹿、俺はもしそうなら……」
「花冷え」より
先月は「君」の五七五に気づいて下さって、ありがとうございます(笑)
   
春うらら 吾子待つ君と 宮まいり
   

ほのぼのとした良いお句ですね〜。るいさんは『そうじゃありませんから、御安心なさいまし』と言っていますが、心では東吾さんの子供が欲しくてたまらないでしょうね。でも、日陰の身では表立っての宮参りは出来ないし…。いつか本当の宮参りが出来る日を待ち望んでいるるいさんを凄く感じました。
(蛍さん)



 あっちの管理人さんの五七五 

「花冷え」は「かわせみ」も初期の初期の第二話、私が大好きな東吾さんとるいさんが まだ忍ぶ恋をしていた頃で、二人のラブラブぶりにわくわくしながら読み始めたものでした。今回はそんな二人の熱々シーンが皆さんの競作ポイントになるのかな。最近はすっかり落着いてしまった東吾さんるいさん夫婦だけど、やっぱり私は祝言を あげる前の恋する二人が描かれた頃が一番好きです。読み返すのもその頃が多く なってしまいます。だから今回の「花冷え」は何度も読み返したお話なのに、いざ詠もうとするとなかなか言葉にならずに苦労しました。「かわせみ」を読み始めた頃のワクワク感を思い出しながら、楽しく推敲させて頂き ました。アップを楽しみにしています!
 (UP後に)
早速拝見してきました。欠席の方もいらしたのにやっぱりすごい読み応え。結構皆さんたっぷり詠んでいらして、「花冷え」にどっぷり浸かっていた様子がうかがえます。まだざっと拝見したところなので、これからもう一度じっくり拝見して来ま〜す!
(あっちの管理人さんの談)

さてまずは東吾さんの登場シーンから。派手な縞物の半纏をひっかけた姿、TVでもそういうシーンがありましたが、兄上様がみたらさぞかしビックリするでしょうね。でも案外苦笑いで「似合うではないか」とか言ったりして(笑) 「かわせみ」で半纏を肩に寛いでいる姿は、東吾さんが「かわせみ」に馴染んだ証拠のようで、るいさんが世話女房になりきって着せかける様子が目に浮かびます。
   
春寒に半纏肩に寛げり
   

お屋敷では、兄上さまや香苗さまの手前、神妙な東吾さんも 「かわせみ」では、ご主人ですものね。世話女房のるいさんですから、熱いお茶もふぅふぅと吹いてさましてあげるのでしょうね〜。(笑)
(蛍さん)



殊に東吾の訪ねて来た日には、花が咲いたようになるるいであった。他人でなくなってから、るいが日一日と開花して行くのが、東吾の眼にも鮮やかであった。
「花冷え」より
↑この表現がとってもお気に入りなんです。もう一つ同じような表現が「江戸は雪」で、東吾さんとるいさんが金杉の伊勢屋仙八を訪ねるシーンにもありました。「それでなくとも、目に立つ美貌が、このところ東吾に開花されたように瑞々しくなっている。」
この2つのシーンともるいさんが東吾さんとの恋でどんどん美しく変身していく様子がよーくわかります。それを眺める東吾さんもさぞ鼻の下が長くなっていたんでしょうね。
   
抱き寄せる花の笑顔が瑞々し
   

女冥利につきる言葉であり、そんな風に女性を変化させられるのも、男冥利なのでしょうね。
祝言のときにはるいさんに見とれていて、兄上さまにからかわれていましたねぇ。 『花の笑顔』は、本当にるいさんですね〜。東吾さんを待ちわびている様子が浮かぴます。
(蛍さん)



「るいに焼餅をやかれるようなことをしていたかどうか、もうすぐ証拠をみせてやるさ」
るいは真赤になって頬をおさえ、東吾は照れかくしに湯づけを大袈裟にかき込んだ。
「花冷え」より
そしてこの辺も競作ポイントになるのかな。何も言うことはありません、この熱々ぶりがいいんですよねぇ(笑)
   
焼餅も恋のスパイス熱々に
   




この「花冷え」では今後の「かわせみ」に重要な役回りを演じる長助親分が初登場と なりました。初版では若い時に女房をなくしたやもめということになっていましたが、新装版ではちゃーんと長助の女房も登場していましたね。
   
初登場待ってましたと声がとぶ (by読者一同)
   

長助親分の初登場なのに詠めなかった自分が情けない…。(泣) 大事なポイントを落とすのは悔しいですね〜。
(蛍さん)
いいです〜!こんな素敵なお句も待ってました!
(麦わらぼうしさん)
今回花冷えを読み返すまで長助親分の初登場を忘れていました。そうかこんな登場の仕方だったんだと今さらながら思いました。でも句は浮かばなかったです〜
(紫陽花さん)



「お前、まさか……」
他人でなくなって一年目であった。子供が出来たとしても不思議ではない。
「いやだ……」
耳朶を染めて、るいは笑った。
「花冷え」より
もう一つこの「花冷え」の大好きな場面が東吾とるいが二人で水天宮へおまいりに行く シーン。そこでの二人のやりとりがなんともホットで嬉しくなっちゃう。
   
出来たのか慌てる夫(つま)の声嬉し
   

この頃のるいさんは、まだ子どもがいないことにそれほど深刻ではなく、赤くなったり、笑いあったり、読んでいても楽しいですね。
東吾さんの嬉しい叫びが聞こえるようですね。
(TERAIさん)



しずかな夜なのに、東吾の耳には三味線の音色がきこえるようであった。
  (略)
桜はもう散りかけているというのに、夜は急に冷えた。
「花冷え」より
最後はラストシーンのやりきれない思いを詠んでみました。
   
花冷えの夜の静寂(しじま)に三味の音
   

<花冷え>もそうですが、<三味線の音色>も競作ポイントだったのですね。こでまりさまも同じ感じで詠まれていますが、どちらのお句もこの場面にぴったりですね。
(麦わらぼうしさん)
「三味の音」は千代次さんそのものですね。麦さまの仰るように 「三味の音」もポイントだったのですね〜。『夜の静寂』って、 まるで千代次さんの心の中のように感じられました。
(蛍さん)



 はなはなさんの五七五 

「花冷え」はとても好きな話です。千代次の描かれ方が控えめなのに情感を感じさせますし、るいの恋もひとつ間違えば同じ道をたどるのではないか、と暗示を与えていますよね。私も初代で岡まゆみさんが陶然と三味線を弾きつづけるシーンがとても印象に残っています。平岩先生がるいと千代次を相対的に書かれたのにならって、力量不足は承知の上でもがいてみました〜。
 (UP後に)
今回も濃ゆい〜♪「花冷え」はやっぱり皆さんお好きだったんだなあ。かく言う私もすっかり浸ってしまって…。推敲しようにもできなくて、「量より質」の誓いをあっさり返上してしまいました。句数増やしてゴメンナサイ。量も質も濃ゆ〜い、「花冷え」宗匠くらくらしたんじゃないかしら。皆様のコメントはお茶目だし♪ゆっくり拝見して、お茶目なだけじゃない、読みの深さを味わってきますね。
(はなはなさんの談)

るいが笑った。化粧っ気がないようで、さりげなく紅白粉をよそおっている。
「花冷え」より
まずはおるいさん。東吾さんとの甘い関係がたっぷり書かれていて大好きな冒頭の部分です。このころのおるいさんは東吾さんと付き合い始めて2年、町方になって3年ぐらいで、まだまだぎこちなく、でもそれがとっても微笑ましいです。
   
咲き初むる花匂い立つ薄化粧
   
戯言に春宵あさく添い伏しぬ
   
花散らすおとこの息の甘からん
   

「春雷」から思えば、淡い(?)情念系ですね。原作には東吾さん目線のるいさんの描写がいくつかありますが、こんな風に思われたら幸せですよね〜。
冒頭の三句 きゃ〜!はなはなさまらしいお句ばかりですね。いいです〜私に は絶対作れないです〜
(麦わらぼうしさん)



馴れない手つきで煙管に煙草をつめて、るいが差し出した。商売女のように器用に吸い付けるなぞという真似はとても出来ない。
「花冷え」より
煙管に煙草を詰めても吸い付けずに差し出す、というのが私はとても好きです。商売女じゃないんだけど、おるいさんがちょっとだけ背伸びをして、この頃はちょっと遊び人ぶっていい気な東吾さんに焼餅を妬いているのですね〜。
   
煙管に火あかくとぼしてよ恋まだき
   

コシキブさんも詠まれたこの場面ですが、新装版ではカットされているんですよ。るいさんらしくないということかもしれませんが、ちょっと残念な気もしますね。
「朝まだき」という言葉はよく知っていますが、「恋まだき」という表現もいいですね。
(TERAIさん)
「鴉を飼う女」の東吾さんは、るいさんと面差しが似ているという染蝶さんから煙管を貰っていましたねぇ。遊ぴ人ぷりを発揮していました〜。(笑)って、話が違う!(^^ゞ らしくないと言えばそうなのかな…と思うのですが、ぎこちなく煙草を詰めるるいさんに、却って初々しさも感じられて、蛍も削除されてしまってちょっとガッカリです〜。そうゆうところまで東吾さんの面倒を見たいるいさんだと思うのですが…。いつのまにか東吾さんは、煙草は呑まないことになっていますね。
(蛍さん)



ラストシーン、千代次に自分の未来をみてしまうおるいさんの肩を東吾さんが抱く、ここも大好きなシーンです。「花冷え」は華やかそうなことばなのに、寂しさも入り混じって、複雑なおるいさんの気持ちも代弁しているようだな、と思いました。
   
花冷えは肩を抱かれて目をとじて
   

蛍もはなはなさまと同じように感じていました。るいさんと東吾さん、身分の上下関係の煩かったこの当時ですから、るいさんは東吾さんの妻になることなどはとうに諦めていたでしょうね。どんな風に流れていくのか先の見えない明日には、肩を抱く東吾さんの手の温かさだけが、今を生きている実感なのかと思いました。
(蛍さん)



言葉は穏やかだが、声の底にぴしっとしたものがあって、客の女は返す言葉もなかったらしい。肩を落して出て行くのがみえた。
「花冷え」より
一方千代次さん。彼女は複雑ですよね。母がステージママよろしくつきっきり、でもその因果で弟に恋路をじゃまされてしまいます。それでもおそらく弟と母のために、生活のために、身を売って金を稼いでいます。恋を全うするために身を売るなんて、果たして同じ女の私にできるのか、なんてあらぬことまで考えてしまったりして。かわせみを追われる千代次の姿が忘れられないです。
   
手枕に乱れておもう別の恋
   
春嵐おんなの足の遠ざかる
   




哀調を帯びた曲が流れて来た。千代次という芸者は陶然と曲に酔っているようである。三味線をひくこと以外になにも考えていない眼であった。
「花冷え」より
陶然と三味線を弾く千代次が私はあわれに思えます。恋も生活も忘れていたい瞬間があるほど、彼女は追い詰められていたのではないかと思います。初代のドラマでも本当に好きなシーンでした。
   
春座敷芸に縋りし独りのおんな
   

どうもはなちゃんは、先月の高信さんといい、千代次さんといい、芸に生きる女性にシンクロしちゃうみたいですね。



子をなして、彼女は恋を成就させたかったのにそれはならず、辰巳芸者ともてはやされても、所詮商売女、と男は蔑みました。母と弟も自分のために命を落とし、彼女はたった独りになってしまいました。おるいさんではないのですが、彼女はどこまで流されていくのか、心配で、でもそれは彼女の運命であって、だれにもどうすることもできないのですね。
   
春あさく流れる先は見えぬ恋
   
何をかも辰巳の春は遠ざかり
   
恋散りて踏み出す闇は花冷えの
   

千代次さんの人生って、自分の気持ちのままに生きたときがあったのだろうか…と考えてしまいます。母親の言うとおりに芸者として努め、弟の不始末の為に自分を犠牲にする。それでも、やっと本心を打ち明けた相手には捨てられてしまって…。るいさんとは此処が違っているのですね。たとえ、東吾さんと別れることになったとしても、自分をしっかり持っていると思うのです。東吾さんに対して、『捨てないで…』とは絶対に言わないでしょうね。千代次さんは、ひとりになって、自分を見つけられればと願っています。
(蛍さん)



 蛍さんの五七五 

先月はどうも済みませんでした。ちょっとナーバスでした。るいさんと千代次さんは職種は違っても、どちらも水商売は同じなのですね。千代次さんが堅気の人と一緒になれないように、るいさんがお侍の東吾さんと一緒になるにはもっと困難なのですね。どうにもるいさんと千代次さんが重なって仕方なかったです。『命がけで…』と言っている東吾さんの言葉が、るいさんにとって生きていく支えになっていると思います。
 (UP後に)
先月の五七五を詠むことが出来なかったので、というのではないのですが、数ばかり多くて恥じ入っています。(-_-;) といいつつも、作りだすとあの場面もこの場面もと欲張りたくなってしまうのですよ〜。お休みの日に一番ご雑作をおかけしたのは私かな…と反省しています。でも、反省と作りたいという気持ちは別なので来月のことは責任持てませんが…。(笑) やっぱり初期のころのお話は皆様の思い入れも多いいのですね。たっぷり堪能させていただきました。
今月の感想は物凄い辛口になってしまいました。せっかく 皆様が作られたお句なのに、それを出汁に自分の言いたい ことばかり言っています〜。ですが…、結構ストレス発散の場だったりして…。(笑)
(蛍さんの談)

お江戸の風物詩のひとつ、浅蜊売りです。当時、深川に貝類を取って商う者が多かったそうです。「からはまぐり、からあさり」の呼び声で、殻つきのまま売りに来ました。浅蜊や蛤、蜆などの貝売りは、子供が多かったそうです。「かわせみ」でも朝の味噌汁に入れて、いい香りが漂っていたような気がします。お吉さんが笊を持って駆け出す光景が浮かんできました。ちなみに、旧暦三月三日は大汐干潟になるので、深川や品川に潮干狩りに出かける人々が大勢いたそうです。三日から六日の四日間が最適だったようです。もっとも、品川と言えば………。潮干狩りを名目に別な遊びに興じるよからぬ(笑)輩もいたそうですよ。
   
朝もやに 棹さす小舟 浅蜊売り
   

蛍さまの江戸の風物シリーズ(?)、毎回楽しみにしています。本当にいろんな事ご存じで、すごいな〜と思います。
(麦わらぼうしさん)



「随分、お気になさるんですね」
るいが睨んだ。
「夜の御膳もあがらないで、よくねむっていらっしゃいましたよ。余っ程、夜更かしがお続きなんだろうって、お吉がいっていました」
「馬鹿……」
「花冷え」より
犬も喰わない痴話げんか的な場面て、読んでいて『勝手にやってろ〜』(笑)と馬鹿馬鹿しいのですが、無ければ寂しいし、やっぱり好きなのですねぇ。
   
春ともし 髪の先まで めくるめき
   




「千代次さんですか」
  (略)
仲居が村尾にささやき、村尾がうなずいた。
「あれはちっょと悪い評判があるそうだ。それを承知ならといっているが……」
「花冷え」より
男なんてねぇ、世間体ばかり気になるのですね。一生懸命尽くして、その挙句に疎まれて、世間の言う事に振り回されて、本当の千代次さんを見ようともしないのですね。親兄弟のために身売りをする時代だと知識として理解しているのですが、母親が自分の娘に春を売らせていたというのも、千代次さんが哀れ過ぎました。椿は本文には登場しませんけれど、椿がポトンと落ちる様子と千代次さんが重なりました。
   
ひとり歩き 悪女のレッテル 椿落つ
   




お雛さまを飾りながら、香苗さまは男雛に通之進さまを見ていたのではないかな…。男雛の横に女雛を置いて、いつまでもうっとりと眺めていたような気がします。桃の節句って、幾つになっても嬉しいものですね。旦那さまの前ではいつまでも可愛いい女でいたい…と言うのはお江戸も今も変わらない女心なのですけれど、現実は…眉毛書き忘れの顔をもう見られていますし…。(爆)
   
好きといふ 言の葉も好き 夫婦(めおと)
   

これはいかにも香苗さんというお句ですね。幾つになっても心で呟きながら、お雛様を飾っている様子が浮びます。まもなく旧暦のお節句ですね。



「話の様子では、ちと遊びがすぎるようだ。部屋住みの身分で世間への聞えもある。当分は慎むように……」
きびしい語調の裏に、兄の笑いがかくれている。東吾は頭へ手をやり、神妙に手を突いた。
「花冷え」より
やっぱり通之進さまにはとてもとても東吾さんも敵いませんね。大きくて優しくて、ちょっとお茶目なところもたまらない魅力です〜。ヤバ!はなはなさまに聞かれたらそれこそ石が飛んでくる〜。(笑)
   
おほらかに 兄の慈愛や 風眩し
   

私も通之進さんのこういうユーモア、大好きです。おや、嘉助さんから通之進さんへシフト?どうぞどうぞ、「松」でなければいいわよ〜。



「そうさ、お袋が姉さんばっかり可愛がるからよう、俺はさびしくって……そいでよ、こんなになっちまったんだよう」
「花冷え」より
定吉さんも自分の心をどうすればいいのか分からなかったのではないでしょうか。悪さをして母親や姉を困らせることでしか愛情を表現出来なかった。姉にばかり母親の愛情が向いてしまっていて、寂しかったのですね。「かわせみ」に来て嫌がらせをしたのも、母親か姉かいずれにしても自分を庇いに来ると分かっていてしたことなのでしょうね。その時だけが母親の愛情を感じる時だったのかも知れません。
   
母恋(こ)ふる こころさすらひ 春哀し
   




『宝貝』が安産のお守りというのは、初めて知りました。もっとも『宝貝』 そのものも実は見たことはないのですが。東吾さんとはこの先どうなるのか心もとないし、せめて二人の間に子供がいたら…。るいさんの願い、そんな気がしました。
   
夢いまだ そっとしのばす 宝貝
   

なんと今日、わたし「宝貝」を拾ってきたんです〜〜♪すっごい偶然!ビックリしました。浜辺に落ちてる物拾いに行ってきたのです。3箇所の浜辺回ってきました。宝貝やなでしこ貝、桜貝に紅貝などなどたくさん拾いました♪♪全部すっごくキレイですよ〜。桜貝と紅貝は俳句の春の季語でもあるそうです。
(のばらさん)



「いやです、別れるなんて……」
  (略)
「いい加減にしないか」
船の中で、男がいった。感情がむき出しになった冷たい声である。
「花冷え」より
船の中での修羅場には、東吾さんでなくても千代次さんの行く末が気になりますね。調べれば調べるほど千代次さんには暗い影ばかりで、救われる未来が見えないです。いくら岡場所の女だといっても、本気でひとを好きになる心は変わらないと思います。季語を題名から安直に頂いてしまいました。(^^ゞ
   
花冷や あふるる泪 まことにて
   




せめてねぇ、一緒になれなくてもお腹の子供は自分の子だと言って欲しかったでしょうね。誰の子かわかりゃしないなんて、酷すぎます。子供には幸せになって欲しい…。母親として、誰でも願うことと思います。
   
倖うすき まだ見ぬ吾子や 母子草
   




男の不実が分かっても忘れられない心、それほどに好きだったのですね。口説くときには上手いことを言って、そのうち手に余るとポイと捨ててしまって…。それでも忘れられないのですよね、女って。
   
をんなの業 恋しや憎し なほ恋し
   




もうひとつこの場面がわからないのです〜。当時は現代と違って国家試験などはありませんでしたから、本職の板前さんが調理をしても河豚の毒に中る場合もあったようですね。お勝さんが調理をし損ねたと取り繕いましたが、源さんにも東吾さんにも実際にはお勝さんは定吉さんを殺す意思があったと分かっています。他の方法では本当に殺したことが分かってしまいますし、そうすると千代次さんは殺人者の娘となってしまう。それを避けるために事故を装ったのだと想像するのですが、姉の仕合わせのためには実の息子の命を縮める母親の気持ちがしっくりしないのです。殺そうという思いの償いのために自分も一緒に死のうとしたのだと、ここまではわかるのですよ。るいさんは『どちらも同じように可愛いい』と言っていますが、もしももしも同じように可愛いいのだとしたら、千代次さんに、『今まで定吉も我慢してきたのだから、お前も我慢しておくれ…』とでも言ったのではないのでしょうか。千代次さんは、『自分は好きなことをさせてもらって来たので、どんな我慢もする云々』と、定吉さんの嫌がらせにも我慢してきたのですね。でも、それは千代次さんが我慢出来ることだったからお勝さんも我慢したのでしょう。若旦那とのことは、その千代次さんさえも我慢のならないことだった。千代次さんの仕合わせのためなら、我が子を殺すかな〜。現代のステージママなのかな〜、一生懸命になり過ぎて、肝心な事を忘れてしまっていたのでしょうか。済みません、長すぎた〜。
   
愛ゆえの 母のつぐなひ 死出の旅
   

お勝については「母の愛」と詠む方が多かったのですが、本当に「愛」なのかなって思いました。お千代を見込んで末は芸者にと、稽古に余念がなかった時に出来た定吉、お勝にしてみれば「今、出来なくても」と思ったかもしれない。その頃散々手を抜いてきて、最近でこそ自分が悪かったと思っているようですが、結局また、自分の都合でその命を絶ってしまう、とても身勝手な気がするんです。「我が子=自分の物」みたいな感じがしてしまいます。
私も単純に「母の愛」と詠んでしまいましたが、そうですよね〜蛍さまのコメントにもこでまりさまの感想にも考えさせられます。本当の「母の愛」ってなんなんだろう…
(麦わらぼうしさん)
わたしも「母の愛」詠んだんですが、これが「母の愛」なのかなぁとちょっと皮肉を込めてしまいました。でもやっぱり「母の愛」のある種の形なんだろうとも思ったり…皆さんのコメントを読んでなるほどなぁと思います。
(紫陽花さん)
私も同じ場面を詠んだのですが、さすが蛍さま、お勝の心情をよく表していると思いました。
(TERAIさん)



「なるべくそうならないようにと、我々は心がけていますが、八丁堀にもいろいろなものが居りますからね」
「花冷え」より
自分の力ではどうにもならない世の中の不条理に一番苦しんでいるのは、現場にいる源さんなのでしょうね。この前の『初春の客』でも苦しんでいました。苦労人の源さんだけに、その言葉が重く感じられました。
   
国憂ふ 声おぼろ夜に 巻羽織
   




「だって、千代次さんには子供が……」
「ああいうところの女は子供を産んでも、父親はないのが定法です。客は誰も父親になりたくはない。なるつもりもありませんよ」
「花冷え」より
千代次さんのお腹の赤ちゃん、皆に祝福されて生まれて来てほしい、そう願ってもそれは無理なのでしょうねぇ。るいさんとて、同じ立場なのですね。晴れて夫婦になってもいない人の子供を産んで、世間からは後ろ指を差されるでしょうし、後ろ指を差されるのは覚悟のうえとしても、子供には仕合わせになってほしい…。千代次さんに自分を重ねていたのではないでしょうか。
   
しがらみを とくすべなくて 春凍り
   




愛した若旦那に捨てられて、母は自分のために弟の定吉を殺して、そして自分も死んでしまって、そうゆうもろもろの重荷を背負って生きて行くのですね。お腹には愛しいひとの子供が宿っている。辛くても千代次さんなら生き抜いてくれると思います。
   
散る花や 枷とし生きむ 左褄
   

私も千代次さんなら生き抜いてくれると信じています。女は弱し、されど母は強し、ですもの。
(麦わらぼうしさん)



 ぐりさんの五七五 

今月は私事で確定申告もあり、本家アンケートで読み返しをいえいるうちにハマってしまったり、妄想物語のラッシュでウハウハしていたりでいまいち「はなびえ」に取り組めませんでした 「花冷え」は親子の情を扱ったものかなと思うのですが 片方の子に夢中になるあまりもう一方の子がおろそかになると言うことは程度の違いはアレやはりある話かなとも思います ーーーーーーーがチョット信じられないかなと思ってしまうのですが
 (UP後に)
皆さん凄いですね 中身の濃い今月の句ですね 季語もどうやって調べていらっしゃるのでしょう どんどん素敵な季語をものにされてう〜んって感じです 私は明日は出さなくっちゃという感じでいまひとつ乗り切れませんでしたが
(ぐりさんの談)

蕎麦屋の主人は長助といい、五十がらみの温厚な男だが、眼つきは鋭いものがある。正業は蕎麦屋で、別にこの辺を縄張りとする岡っ引としてお上御用を承っている。
「花冷え」より
   
待ってました 長助親分 登場だ
   

あっちの管理人さんも詠まれていましたが、登場と同時に大向こうから声がかかりそうですね。
あっちの管理人さまのお句とあわせて、み〜んなの気持ちが詰まっていますよね!
(麦わらぼうしさん)
『いまひとつ乗り切れませんでした…』と仰ってお出でですが、どうしてどうして、しっかりと長助親分をお詠みになっていらっしゃい ますよ〜。♪♪本当に「待ってました」ですね。
(蛍さん)



好きな芸に打ちこめ、芸者になってきれいな着物をきて腹一杯食べられて外見は辰巳の姐さんと呼ばれ、金持の客の相手をすることを出世と思い込んでいた娘であり、その母親であった。
「花冷え」より
   
芸者に なるは出世と 親子鷹
   




   
うっとりと 三味の音に酔う 春時雨
   

千代次さんは悪い噂は立っていても、芸事はしっかり身につけていたのでしょうね。その芸だけに打ち込む事が出来ていたならぱ、また違った人生もあったと思います。母親を責める訳ではないのですが、弟の育て方を間違わなければ、弟がまともな人間であれば…。姉弟のふたりとも母親の犠牲になってしまったように感じます。
(蛍さん)



「どうなるんでしょう、千代次さん……」
二人だけの部屋で、るいが呟いた。
「どうなるんでしょう、生まれて来る赤ちゃんは……」
「花冷え」より
   
花冷えの 夜に女の 先思い
   

生まれてくる子が女の子だったら、千代次さんもお勝さんのようになるのでしょうか。それとも全く違った生き方を教えるのか…。
千代次さんの事を案じながら更けていく夜の空気が感じられるお句ですね。こうやって千代次さんのこれからを心配してくれる人がいるのですから、なんとか幸せになってほしいです。
(麦わらぼうしさん)
物語のこの先の展開を上手く暗示していらっしゃって素晴らしいお句だと思いました。
(TERAIさん)



初代テレビの残された千代次の悲しげな顔が心に残っています これから一人どうするのでしょう
   
春嵐 心に吹くは 誰のため
   

「誰のため」…千代次さんは一見悪女のように噂されていますけれど、母親のことも弟のことも自分を捨てた若旦那のことも、責めないですね。運命と全てを受け入れています。千代次さんの心って綺麗ですね。「女がひとり」のお勝さんを思い出しました。人の噂も七十五日、また新しい恋が見つかりますよ。
(蛍さん)