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 夏の夜ばなし
「新装版 水郷から来た女」  (平岩弓枝著:文芸春秋刊)
平成十五年八月


今月も皆さんから力作が集まったんですね。
ここ数ヶ月でこんなに参加者が増えるなんて、こでまりさんの尽力でしょう。
それに今月はなんだか皆さん、肩の力が抜けて
のびのびと詠んでいらっしゃるかんじ。
お世辞抜きで、皆さんにいいものを見せて頂き、心が温かくなりました。
(小式部さん)



東吾が腰を上げると、番頭が心得たように、紙包を源三郎の袖へ落し込もうとした。
「御苦労様でございます」
その手を源三郎がひょいとおさえた。たいした力でもないのだろうに、番頭は腕がしびれて紙包を下へとり落した。
小判がいい音をたてて鳴った。
「行こうか、源さん」
あっさり店を出て行きながら、二人はなんとなく顔を見合わせた。
「夏の夜ばなし」より
この場面の源さん、かっこいいですよね〜。きっとあの方々も詠まれると思ってましたが。
落ちた小判の音は、ちょうど芝居の「き」の響きのようです。番頭が小判を入れようとした羽織、いくら野暮と云われる源さんでも、夏羽織だったのではと思いました。
   
夏羽織 ひるがえす背に 小判の音



「酒を川に捨てていたと申されますか」
「そのようなこと、あるわけがないが……」
神林通之進が弟をみた。
「酒問屋にて、時折、倉の酒を腐らすことがある。倉の戸を閉め忘れたりして、夏の温気が倉に入ると、酒が腐る……その酒の処分だが……」
酒問屋で倉の酒がくさったと世間へ知れれば、忽ち取引は停止となる。下手をすると店を潰しかねない結果になった。
「兄上……」
東吾が手をついた。
「夏の夜ばなし」より
兄上よりよほど世間を渡り歩いていて、よほどお酒も飲んでいそうな東吾さん。でもさすがに兄上は、タダモノではありません。この後の口添えも、いい間合いでした。
(注:浮雲は季語ではありません)
   
浮雲や 世情通なり 名与力
   



 なっckyさんの五七五 

今回は、あまり趣向のいい句や歌を思いつけませんでした。
青蚊帳ってなんか色っぽいですよねえ。大昔(笑!) おばあちゃんのところで、古い蚊帳を釣ってもらったことがありましたが、「トトロ」の五月とメイちゃんよろしく、蚊帳の上ではね回って、だめにしてしまいました。
(なっckyさんの談)

「さあ、もうそんな話はやめにして……」
るいの声がして、簾戸が内から一枚開いた。
雨戸を閉めに出ようとしたらしい。そのるいの背後で、庭をみたお吉が、
「お嬢さん、そこになにか白いものが……」
指さしたとたんに、るいが悲鳴をあげた。
東吾はあっけにとられた。季節柄、白絣の着流しである。
「夏の夜ばなし」より
幽霊に間違えられて、少しむくれている東吾さんが結構かわいいですね。
   
幽霊に 間違えられたか 白絣
   



裏から入ってきたのはいいけど、部屋内のにぎやかな話し声に入りそびれていた東吾さんに驚いて…
   
灯を細め 夏の夜話 通夫(つま)に驚く
   

なっckyさん、ようこそ「はいくりんぐ」へ!
お待ちしておりました。この場面、せっかくの色男も形無しでおかしいですね。



るいさんと二人っきりになって、行燈がふっと消え
   
行燈が 消えたのを機に 青蚊帳へ
   
青蚊帳に 二人の床を 並べのべ
   
青蚊帳に 妻を抱く手の たくましき
   



「あいつは、娘をみたそうでございます。私どもが酒を捨てに海へ出るのを、娘が塀ぎわから心配して見送って居りました。駕籠の中から、娘の顔をみたと申しまして……」
おそらく、当てずっぽうだったろう。が、正直者は、すぐ顔に出る。良庵のような、ゆすりに馴れた男には、赤児の手をひねるようなものだったに違いない。
「夏の夜ばなし」より
松江公(雲州公)に脅かされてもこりもせず酒問屋の池田屋を脅しにかかった医者の良庵に
   
化け物に 脅かされても 無頼医者 ただは起きぬと ゆすりの種探し
   



そんな無頼医者が殺されたのを聞いて雲州公は
   
毒虫の 退治は罪にせず 飛んできた カラス天狗に 任せるがよし
   



   
毒虫も 妖怪も消え あきつ飛ぶ空
   

初登場のなっckyさまはまたすごい方ですね。するするとできてしまうような感じで、無理のない句ですよね。ご本家の掲示板でもさらりとつけてくださるあたり、上級者ですね。
(はなはなさん)



 のばらさんの五七五 

良庵はわる〜〜い奴!!確かに気の毒な池田屋さんですが、いくら脅され、せっぱつまっても、だからって人殺し…手口も計画的で、しかも残忍〜(−−;)今まで普通のお店の主人、番頭、手代として暮らして来た人たちがあんな残忍な事をしといて気がおかしくならないのか。夜、うなされないのか… ・。等など、今度読み返してみていろいろ考えてしまいました。前半ののどかさが救いです。
 (UP後に)
実は先月あたり、人を殺した夢をみたんです〜〜。(誰かは分からない…)もう、すご〜〜くリアルな夢で「どうしよう、殺しちゃった…どこに死体を隠そう?!!」とか「夫になんていおう?」とか「もう傷んで来てるかも」と「「人にばれたらどうなっちゃうんだろう!!!」とか…もう恐くて恐くて、目が覚めたときは本当にホッとしました。
「桐の花咲く」はかなり辛いラストでしたが池田屋さんはその後しっかり生きていけてるといいですね…。夢の中で気が狂いそうに恐かったんで、妙に気になっちゃいました。
(のばらさんの談)

暑い季節だから、雨戸は開いた儘で、るいの部屋は簾戸だけで、部屋の中から賑やかな女達の声がしている。
るいが一人だけと思った見当がはずれて、なんとなく声がかけにくく、東吾は庭に立った儘、悪戯っ子が家へ入りそびれたような顔で突っ立っていた。
「夏の夜ばなし」より
   
簾戸うちの嬌声はらみ風過ぐる
   



るいは、なんとなくよりそって、酒を注ぎ、団扇の風を男へ送っている。
勿論、お吉も嘉助も、女中達も、この部屋には寄りつかず、風鈴の音だけが、せめてもの涼を運んでいた。          
「夏の夜ばなし」より
狸穴帰りの東吾さんくらくら〜?!
   
団扇風おくる手首の白きはだ
   
行燈を消すのは小粋なキューピット♪
   

のばらさんとのカタカナ語つながりも嬉しかったです。
(たまこさん)



お大名の遊び心が、池田屋にとっては恐怖の芝居の幕開け…
   
数寄心呼び水となり幕が開く
   



それにしても、宙吊りにされた良庵は、かなり暴れたに違いない。縄を固定させて、少なくとも二人の人間が、良庵がもがき苦しみながら死ぬのを見届けていたものだろうか。 
「夏の夜ばなし」より
いくら東吾さんや源さんが見逃してくれても自分の罪は自覚してて欲しい…。世の中殺したろか〜と思いながら、悔しくて血の涙を流してる人もいたはず…。
(おきくの両親も)
   
毒虫め思い知れとや鬼になり
   



手代のほうが奥へ行って、長助の女房に古傘をゆずってもらえないかと頼んでいる。
まだ、かなりひどい降りの中を、二人は逃げるように蕎麦屋を立ち去った。
「夏の夜ばなし」より
娘も、自分と店の為に父親や恋人が何をしたのか知っている…。手を下した時の事が頭を離れず耳鳴りがしたかも…
   
闇抱かえ夕立道を二人行く
   
我が上に夕立やまぬ罪ありて
   

そうですね。今まで普通の暮らしをしていた人たちが、このあと普通の気持ちで暮らせるとは。。。そのことを軽々しく考えない人たちだからこその八丁堀の判断だったのでしょうか。
それにしてものばらさまの見かたはさもあらん、と思いました。ただの善良な市井の人々が罪を犯して平静でいられるわけが無いですもの。「桐の花散る」の若い大工さんも狂ってしまいましたし…。
(はなはなさん)




「化物屋敷の話を利用して……なんとか世間をごま化そうと致しましたが……」
「なあに、化物屋敷の妖怪の親玉から、お指図があったんだ。烏天狗さ。烏天狗も、 たまにはいいことをするもんだ」
泣いている親娘にいい、東吾は源三郎と外へ出た。
「夏の夜ばなし」より
本当のお芝居なら幕が降りればお終いですが…
   
おのが罪消えること無き夏芝居
   
罪を自覚したうえでもう泣かずに腹をくくって生きて欲しいです    
   
天眺む夏の夜ばなしの行く末を



 紫陽花さんの五七五 

初投稿です。がんばってみました。がんばったわりには…なんですが。
自分の句が載ったら恥ずかしいなぁと思いつつ、皆さんはどんな風に詠んだのか楽しみです。
 (UP後に)
私のブッキー(不気味)な三つ目君まで載せていただいて、ありがとうございます。
みなさんの反応が心配でしたが、笑って許していただけたようで、三つ目君も草葉の陰で喜んでいるとおもいます。三つ目小僧って何を着て髪型はどうなっているのかわからなかったので、図書館で妖怪図鑑から水木しげるの世界、児童書まで探したのですがありませんでした。図書館で検索してもらいましたが、一つ目はあるのですが、三つ目はありませんでした。
司書さんがいうには最近は一つ目が主流のようだとか。妖怪にも流行があるのかと思いました。だから私の三つ目君はまったく適当です。妖怪の方々に怒られそうです。
(紫陽花さんの談)

通されたのが広い座敷で、目かくしをはずし、侍達は下って行く。
やがて、唐紙があいて、小さい子供がお茶を持って出て来たのをみれば、これが見つ目小僧で、額の真ん中に大きな目が光っている。
「夏の夜ばなし」より
   
夏の夜 三つ目小僧に 茶をだされ
   

いらっしゃいませ。お待ちしていました。
あの場面、いろんなお化けが出ますが、なんといっても気になるのは「三つ目小僧」です。よくぞ詠んで下さった!という感じです。

「一人でこっそり楽しんでください。」とのことでしたが、かわいいイラストなので、皆さんにもお披露目です。


紫陽花さまの三つ目小僧がまた秀逸です!イラストがとってもかわいらしくて…くすくす(^o^)
(はなはなさん)
紫陽花さんのイラストって、何なんだろうって楽しみにしていたんですが、予想外で。かわい〜い♪です!一緒に遊びたい。
(たまこさん)
紫陽花さまの一句やられた〜って感じ!絵もかわいい〜♪まさに今回のお話のいい場面ですよね。わたしも考えたのですがまとまりませんでした…。
(のばらさん)
紫陽花さんのイラストがカワイイ!
(小式部さん)
三つ目小僧、拝見しましたよー!思わず「可愛い〜!!」って声出しちゃいました。本当は怖いはずなのに、紫陽花さんが描くとなんだかユーモラスで可愛いです。
(あっちの管理人さん)
初投稿なんて、思わず「ウソッ」って言ってしまいました。イラスト集など拝見させて頂いていますので、もうご常連様のような錯覚をしていました。
三つ目チャン、可愛いいです。
(蛍さん)



 あっちの管理人さんの五七五 

この所ずっと参加したいしたいと思いながら、句心がないのでご無沙汰しました。
やっと今月は参加で来ます ホッ
「夏の夜ばなし」は初期の作品で、東吾さんるいさんはまだまだ熱々。芝居っ気たっぷり、スカッと悪人退治して、まさに蒸し暑い夏の一夜にぴったりなお話ですよね。
 (UP後に)
いやぁ益々盛況。 今頃やって来た遅い夏に、スカッと盛り上がって「夏の夜ばなし」 いいですねぇ。
こうやって一つの物語でも、皆さんが詠む視点が同じだったり、違ったりとても楽しいです。
(あっちの管理人さんの談)

「それが、あの……御存知ですか、お化け屋敷へ連れて行かれたお医者の話ですけれど」
るいの部屋へ戻って、男は行儀悪く、浴衣の前をかき合せただけで、すでに仕度のしてあった盃をとり上げる。
「夏の夜ばなし」より
   
夏の宵 さしつさされつ 幽霊話
   

るいさんをうらやましく思うことの一つは、東吾さんという聞き上手の旦那様がいること。たとえその場では聞いていないようなふりの時でも、ちゃんとるいさんが納得するようにしてくれますものね。



化物屋敷の悪戯は、松江の殿様で、今は隠居をしている南海侯といわれるのが、暑い夜の徒然に思いつかれたことだという。
  (略)
化物になったのは、御贔屓の役者である瀬川菊之丞達で、この正義感を伴った悪戯は、まず夏の夜の退屈しのぎにはもって来いであった。
「夏の夜ばなし」より
   
化け物も 人助けする 夏の夜
   



「どうも、東吾さんにいい役をとられましたな」
笑っている源三郎に、東吾は頭を掻いた。
「今夜はかわせみで、ゆっくり飲もう。暑気払いと妖怪ばらいだ」
「夏の夜ばなし」より
「どうも、東吾さんにいい役をとられましたな」池田屋ではすっかり源さんのお株を奪った東吾さんですが、きっと裏では源さんや通之進さんが良い様に収めたんでしょうね。
   
暑気払い 一件落着 名推理
   



 朝霧さんの五七五 

今月もおじゃまします。毎度お恥ずかしい限りです。
(朝霧さんの談)

  
青蚊帳や 妖怪お化けも 夜のゆめ
  



大川を舟が上り下りしていた。
積荷舟が多い。
橋の上から海へむかって立つと、正面に石川島、左手に佃島、右手遥かに浜御殿の森が見える。
「暑くなりそうだな」
「夏の夜ばなし」より
   
炎天の 大川めぐる 積荷船
   

朝霧さんは登場人物だけでなくよく、お江戸の風景を詠んで下さいますね。今月の息子さんの評は、いかがでしたか。



「するってえと、本物の妖怪変化でしょうか」
長助は眉をしかめて、あたりを見廻した。
さっきまで晴れていたのに、気がついてみると、かなり暗くなっている。
遠雷が聞えた。
午下りの夕立が来るらしい。
「夏の夜ばなし」より
   
遠雷の 聞こゆるお江戸 昼下がり
   

朝霧さまの句はとても好きです。ああそうだったね、って懐かしいような。かねがね「只者ではない」と思っておりましたが今回はまた秀句がいっぱいですね。特に「遠雷の」が好きです。
(はなはなさん)
朝霧様の句、江戸の風景が情景が素敵!でした…。わたしは情景についてどうもピリッと読めないんで、いつも「はあなるほど〜〜」と思ってました!
(のばらさん)



   
なんとなく 秋は近しと 赤とんぼ
   



 浅黄裏さんの五七五 

同じ材料(語句)で何通りも出来た場合などさてどの句がいいのか、素人には判断もつかず、繰り返し繰り返し読めば読むほどかえって頭痛が増すという結果になりました。頭痛を振り切っての投句です。
 (UP後に)
ふた月続けて思うことは駄句でもあんなに綺麗にレイアウトしてもらうと、なんだかそれなりに見えるということです。
…に、しても9月のお題が気になる〜ぅ。できるだけ早くお題を教えてくださいませ。
(浅黄裏さんの談)

「だって、本当にお化けなんて……」
るいがいいかけた時、行燈がふっと消えた。
  (略)
「馬鹿、油が切れたんだ」
それとわかっても、るいはすがりついたままで、東吾はそんなるいを抱き上げて、次の間へ運んで行った。
青蚊帳の中には、夜の仕度が出来ている。
「夏の夜ばなし」より
   
短か夜の 枕は 青き蚊帳の中
   

この場面は、今回の一番人気ですね。最近はすっかり見かけなくなった青蚊帳。こうしてみると、とっても艶っぽいものですね。



雨を避けて、二人の客が蕎麦屋の店へとび込んで来た。
若い男女だが、男のほうが手拭を出し、娘の濡れた肩や背を拭いてやっているのをみると、どうも大店のお嬢さんと手代といった恰好である。
種物を二つ註文して、二人とも、茫然と空を仰いでいる。
  (略)
まだ、かなりひどい降りの中を、二人は逃げるように蕎麦屋を立ち去った。
「夏の夜ばなし」より
食べ物屋で一番困るのって、出したものを手付かずで残されてしまうことなんですよね。湯気をたてているようなものをすぐに捨てるにはしのびず、きっともうお蕎麦がのびきってしまってから諦めて始末したのではないかな。
長助親分のおかみさんの『うちのは、美味しいんだけどねぇ…』というセリフが私の耳には勝手に聞こえてきました。
   
夕立来て 種物ふたつ 残しけり
   

お蕎麦の句もおもしろい
(のばらさん)



   
夏の夜の 温気にさそわれ 虫の出づ
   



兄上と上つ方との意向を受けて池田屋へ駆けていく東吾と源さん。なんかずいぶんとお裁きが甘い気がしたのですが、夏の初めの頃、半次とおよしという死なせなくても良かったふたりとかかわりをもったことで、こういう運びになったのかなとも思いました。
   
連れ立ちて 涼風運ぶ 使者たらん
   



 たまこさんの五七五 

ご本家の掲示板を見ると、今月も、前回に 劣らず盛況のようですね。すっかり遅れをとったようですがとりあえず…
 (UP後に)
皆さん、たくさん詠んでらして、すごいなぁ。私はいつも一句でも苦労で、何とかもう一つか二つを搾り出すって感じなので、どんどん作れる方は羨ましいです〜
「青蚊帳」「赤蜻蛉」など、同じところに注目したものは、よけい興をそそられますよね。今月も「あそこをこう詠むか」の楽しみを味わわせていただきました。拙宅にもどなたか書いてらっしゃいましたが、こでまりさん自身、こんな盛況になるなんて、最初は予想されていなかったんじゃないでしょうか。
(開設直後の、こじんまりした「今月の五七五」もそれはそれで、味わい深いですけど)
(たまこさんの談)

最初の「かわせみ」でのシーンです。 なんか、小野寺さんの「しりとり川柳」モードが抜けなくて…
   
怪談は スパイス代わり 二人の夜
   
青蚊帳に 後を託して 宴果つる
   

たまこ様〜
「カタカナつながり」場面も同じところでしたね。
(のばらさん)



空に、浮かんでいる雲が、秋を思わせた。
赤とんぼが、二人の前をよぎってとんだ。
外は、まだ暑い。
「夏の夜ばなし」より
これはラストシーンですね。源さんが「東吾さんにいい役をとられましたな」と笑っていますが、笑ってはいても、源さんの立場としてはやっぱり、多少、複雑なものがあったと思います。ご本家でも話題になりましたが、司直の立場として犯罪を見逃すことには違いないので…
そういう親友の気持ちをわかっていて、あえて触れずに「今夜は暑気払いで飲もう」と誘う、東吾さん。どちらも潔くて、いいなと思います。
という訳で、今回も始めと終りだけで、「中抜き」でした…
   
裁きより 人情とりて 赤蜻蛉
   

このお裁きのところがこんなに話題になるとは、さすがに皆さん、読みかたが深いと思いました。



 はなはなさんの五七五 

「夏の夜ばなし」は殺された悪徳医師には少々悪い(自業自得か)のですが、すっきりスカッとさわやかな楽しいお話だと思います。
ちょっと色っぽいシーンもあるし…東吾さん・源さんのコンビも元気ですし、怖がりお吉さんも登場するし…。ちょうどラブラブ真っ最中、おまけに長助親分も登場、いいお話を選ばれました!!
 (UP後に)
また今回もすごい数の投句ですね。それにみなさん個性的で…。アップを楽しみにしておりました。みなさまの句が読みたくて読みたくて…。
青蚊帳がやっぱり色っぽくていい感じですね。 さすがみなさまテクニシャン!人気の青蚊帳、私は詠まなかったので「やられた〜」って思いました。確かに色っぽくってすてきですよね。
(はなはなさんの談)

暗闇から突然白い影…たとえ恋人でもびっくりしますよね。でもそれも甘〜いピロートークになるのが恋人同士というものですね。
   
夏の夜の 短き間にも 甘きささやき
   



「待て、雲州侯はこのように仰せられたそうじゃ。良庵と申すは、世の中の毒虫、毒虫の死に、もし罪なき者が罰せられる場合は、烏天狗に罪を背負わせるも如何ならんとな」
兄の声を背に、東吾と源三郎は屋敷をとび出した。
  (略)
「つまらぬことを口走るでない。すべては夏の夜ばなし、涼風と共に海へ流して忘れることだ」 (略)
「妖怪ばなしのお好きな、さる高貴なお方よりのお口添えだ。八丁堀も石頭ばかりではない。娘によい聟をとって暖簾を大事にすることだな」
「夏の夜ばなし」より
南海侯は男気も正義感も一杯、東吾さんや源さんも、江戸の男はそろいもそろっていい男ぶりです。
   
夢なりと 裁く情けの 夏花火
   
夏の虫 毒おおけれど 烏喰ふ
   



翌朝、八丁堀の畝源三郎が、「かわせみ」へやって来たのは、まだ朝顔の露が朝陽に輝いている時刻で、「かわせみ」の庭の桐の木では、蝉が鳴いていた。
「夏の夜ばなし」より
  
鬼の棲む 巷いろどる 花朝顔
   



今回は楽しいお話に便乗して私もちょっと遊んでみました。はじめの威しは「南海侯」が犯人ですよ、と引っ掛けてみました。さすがに三音節では無理だったので、業平の「かきつばた」にならって拙いながら挑戦してみました。
  
            (なん) 何とせむ
            (か)   金ばかりとる
            (い)   医師威し
            (こう)  候なりと(そうろう=こう、音が同じ「侯」と掛けて)
            (おに) 鬼の言ふらむ
  

これは面白い趣向ですね。私も以前、登場人物の名前を入れて詠んでみました。こういう柔軟な発想が「二科展」に通じるのか!おめでとうございました。
「しかけを…」との予告、楽しみにしてたんですよ〜。なるほど!こういうのも面白い!とびっくりしました。
(のばらさん)
謙遜していらっしゃるので、もっと馬鹿馬鹿しいのを作って差し上げます。(「南海候」で)「なん」となく 「かい」てみたのが「こう」こうに 「病膏肓」のつもり(汗汗…)↑
(たまこさん)



 蛍さんの五七五 

思いがけない出来事に生活のリズムが狂ってしまって、気持ちまで上の空になってしまっていました。付き添いの合い間に談話室に「かわせみ」と ノートと鉛筆を持ち込んで、読みながらブツブツ言っている自分を思い出すと、物凄く滑稽です。でも、何かに集中していると自分の気持ちも落ち着いて来るのですね。
(蛍さんの談)

笑いながら、お吉は東吾の足を拭き、すぐ風呂加減をみに行った。
狸穴の帰りだと、「かわせみ」中が心得ている。
東吾が汗を流している中に、るいは化粧を直し、東吾のために浴衣を出して風呂場へやって来た。
「夏の夜ばなし」より
狸穴のお稽古の帰りの「東吾」さんと何日かぶりにあえて、やっぱり好きな人の前ではいつも綺麗にしていたい気持ち、綺麗と思ってほしい気持ちはよく分かります。
   
待ちわびて 女心の 薄化粧
   

るいさんの何気ないしぐさに女らしさ、可愛らしさを感じますね。薄化粧でいいんだから、うらやましい。



指さしたとたんに、るいが悲鳴をあげた。
  (略)
声をかけた時には、もう老番頭の嘉助がとんで来ていて、
「どうしたんです、お嬢さん……」
るいをかばって、庭へ油断のない身がまえをみせた。
「夏の夜ばなし」より
嘉助さんの何よりも「るい」さんが大事という気持ちは、「かわせみ」の何処そこにあふれています。そんな嘉助さんが大好きです。
   
我が身より 大事とかばう 心意気
   



アツアツムードのお二人には、妖怪も雷様も退散してしまいますね。何にも言う事ありません。
   
妖怪も 溶けてとろける 蚊帳のうち
   



「お屋敷へうかがいましたら、かわせみへ出かけられたときいたものですから……」
「当分かわせみには行かないほうがいい、袋叩きにされるぞ」
「おきくの親達のことですか」
源三郎が苦笑した。
「夏の夜ばなし」より
かわせみのおきくさんのご両親が「源」さんから疑われて、おきくさんは心配で御膳も喉を通らなくなってしまっている。たまには「源」さんの目星も狂うときもありますね。
   
腕っこき 見込み違いか 安堵する
  



天罰は降りるものです。
   
悪銭と 悪知恵長く 続かざり
  



 千姫さんの五七五 

今回の「夏の夜ばなし」では意外な発見をしました。
良庵を化物屋敷で懲らしめたのは南海侯。池田屋は化物屋敷の話を利用して烏天狗で良庵を殺した。「化物屋敷が南海侯の仕業とは知らずに『烏天狗』で殺す」
これは、平岩先生が、南海侯は松江の殿様で大山(だいせん)には烏天狗が棲むという伝説があるのを「込み」で書かれていたんですね。これって、今、気づいたのは私だけ?ちょっと、書き方がまずくてうまく伝えられないけれど私は大発見した気持ちです。これが伝えたくって…
(千姫さんの談)

東吾が行ってみると、弥九郎は麻の着物に袴をつけて、机に向っていた。
「今日はだいぶ汗をかかされたぞ」
のっけから穏やかな苦笑を向けられて、東吾は慌てた。
「汗をかいたのは手前です。」
「狸穴の道場でも、お前の評判はいい。剣は人柄ということが、東吾の場合は実に明瞭だ。若いに似ぬ、豊かなものが東吾の剣にはある。わたしはなによりもそれが好きだが……」
「夏の夜ばなし」より
斎藤弥九郎や南海侯をGoogleで調べていたらスト・ファの「実在の人物」のページに行き着きました。嘉助のエクセルが「七夕の客」からの発想だった事といいたまこさんは、読みが深い!  
   
弥九郎の 名が出て幕末 思い知る
   

そうですね、気づかれたのは、千姫さんだけみたいですよ。大山にはそんな伝説があるんですね。弥九郎が実在の人物と知っていたり、こういう伝説を知っていると、同じお話でも奥行きが全然違ってきますね。
教えてくださってありがとうございました。



「気後れ」は「庭の闇」と悩んだのですが…白絣は季語になるかなと思い、どうしても使いたかったのです。随分、時間がかかりましたが、なっckyさんも使っていましたねキャっ、嬉しッ。
   
気後れて 幽霊さわぎの 白絣