戻る

 岸和田の姫
「夜鴉おきん」より  (平岩弓枝著:文芸春秋刊)
平成15年3月


みなさんすごい!!場面が目に浮かんできます。
私もと言いたい所ですがなかなか…むずかしいです。
(花みずきさん)



江戸は一日ごとに暖かさを増していたが、天気はあまり良いとはいえず、今日も八丁堀を出る時から、絹糸のような春雨が降っていた。  (略)
「この前、東吾さんと来た時よりは、随分と開墾されて来ましたね。」  (略)
「この前は、源さんが、けもの道で怪我をしたな」
百姓が畑を荒らす狐のために仕かけた罠に、源三郎が足を取られた。
「そのおかげで、東吾さんは美女に惚れられたんじゃありませんか」(「師走の客」参照)
「岸和田の姫」より
   
代々木野や おもかげかくす 春の雨



宗太郎が案内して、病間へ行くと老師は思いの外、元気で、雨の中を、はるばる八丁堀からやってきた愛弟子と、持ち前の大声で話をしたが、やはり衰弱はかくせない。
それでも、若い男の顔が三人そろって、山荘の中は賑やかになったし、弟子たちにはげまされたように、老師も食欲が少し出た。
「岸和田の姫」より
   
山荘に 満ちる若さや 老師癒ゆ



「まるで、娘と祭見物に来た親父のようだな」
背後で宗太郎がひやかしたが、東吾はなにをいわれても全く、気にならなかった。限られた今日一日、花姫を如何に楽しませるかだけを考えている。
「折角、ここまで来たのですから、向島の花見をしましょう」
「岸和田の姫」より
   
今日ひと日 愛しみてすごせ 花は野に



見送っている東吾の耳に、やがて聞えて来たのは鳩笛の音であった。
途切れ途切れに、しかし、懸命に花姫は鳩笛を吹いている。
春の夜の中に、東吾はいつまでも鳩笛を聞いていた。
「岸和田の姫」より
自らの初恋は珊瑚のかんざしに秘めてるいさんに、そして手元には茶店のすみで売られていた鳩笛がひとつ。
でも東吾さんに買ってもらった鳩笛は、かけがえのない初恋の形見なんだろうなぁと思いました。
   
初恋の かたみの調べ 鳩の笛



 たまこさんの五七五 

朝霧さんのお株をとっちゃったかな?と思いましたけどかわせみとも縁の深い、NHK放送センターのあるあたり、当時は広々とした野原だったのだなぁと、春の野の朝を思い浮かべてみました。
「とける」は解ける・溶けるとあって、「解」は「ほどく、ほどける」「溶」は液体に…とあるので、力関係的に霞>風で、風が霞に吸い込まれる感じだと「溶ける」、風>霞で霞が消えるのだと「解ける」なのかしら?ウーンむずかしい。
 (UP後に)
それにしても、同じテーマに沿っていて、長さが十七文字しかないというのに、それぞれの個性の違いってほんとに面白いものですね。
(たまこさんの談)

雨上がりの、その朝の代々木野は朝霧が深かったが、陽が上ると、それも消えた。
山荘の庭の桜も、蕾がかなりふくらんでいる。
「岸和田の姫」より
   
朝霞 解く風淡し 野辺の家



ずっと、店から供について来ている長助が先に立って堅川のほうへ行くと、自身番の前で定廻りの畝源三郎と出会った。
「番人」
源三郎の声が定番へ向い
「何事もないか」
「へえ」
定番が頭を下げた時には、もう源三郎の姿は遠くなっている。
「岸和田の姫」より
これがこの前「うまくまとまらない」とボヤいておりました源さんが一瞬だけ登場するラストのシーンなんです。
「町奉行所の人々は、何事かあって功名手柄を挙げるのをのぞんでいません。何事もないために、生涯を江戸の町々を歩き続けて終ることを誇りとしています。」この東吾さんの台詞が、いつもジンと来るんですよね。
   
花を背に はや遠ざかる 巻羽織

この台詞、八丁堀育ちならずともグッときますよね。
江戸の町を足早に遠ざかる後姿が目に浮かぶような、臨場感のあるお句ですね。
「源さん登場」シーンの句は颯爽とした源三郎さんの姿が彷彿として大好きです。
(はなはなさん)



 朝霧さんの五七五 

「はいくりんぐ」に投句してから俳句なるもの、おもしろーーいと興味がわいてきて「添削例に学ぶ・俳句上達法」「一度は使ってみたい季節の言葉」「俳句技法入門」等図書館から借りてきまして、毎日家事の合間に頭を使っております。2・3句頑張っています。そのうち近くの市民センターで主催している俳句教室にも行ってみようと思うようになりました。
今月のお話「岸和田の姫」、やはり私も大好きなお話の一つです。何度も読んできたのですが、目的をもって読むとまた違った意味で楽しかったです。取りあえず思い浮かんだ句を早く投句したほうが出来不出来より恥ずかしくない。恥ずかしく思うのは来月にしましょうと!!
 (UP後に)
うーーーーん。うなってしまいます。皆さんお上手。ほんと!!はまってしまいますね。
「岸和田の姫」皆様の句を想いながらもう一度読んでみることにします。
(朝霧さんの談)

「かわせみ」の客間で、待っていた髪結いが、花姫の髪を町方の娘のように結い直し、るいが用意した友禅の町方の娘の着物に着替える。
「東吾を呼んで下さい。東吾にみてもらいます」
「岸和田の姫」より
   
ただ一度 町方娘や 花の舞い



長寿庵の店へ入った。 (略)
「なにが、おいしいのですか」
死ぬほど、お腹がすいているという花姫が釜場のほうをみる。
「なんでも旨いですが……」
「東吾と同じものにします」
種物を三つ、注文した。あられ蕎麦である。
「岸和田の姫」より
   
花舞いて しばししのぎに あられ蕎麦

可愛い花姫が思いがけない食欲で、いろいろなものをたいらげていきますね。
でも花姫のこの後の人生に、あられ蕎麦との出会いはなかったかもしれませんね。



堤の上の満開の桜は、夕映えの中でひとしきり花吹雪を散らしている。
「なんと美しい……花は生涯、忘れません。お江戸の春は、たとえようもなく見事で、そして……かなしい……」
   
忘れえぬ お江戸の終わりは 花吹雪
鳩笛や 音色悲しく 春の宵
   

朝霧さまの「花吹雪」の句もいいなぁ。
(はなはなさん)




 あっちの管理人さんの五七五 

今月のお話「岸和田の姫」で、昨日通勤電車の中で次々と出ました(笑)不思議なもので、なかなか思い浮かばない時もあれば、昨日のように良い(自分でそう思ってるだけなんだけど)ものが浮んだり。でも忘れちゃいけないと、すぐに携帯にメモしておきました。
 (UP後に)
今月の五七五、拝見しました。また今月はすごい盛会ですね。どんどん参加者が増えてますねぇ。かわせみ五七五病、確実に広がってますね。
「岸和田の姫」やっぱり春、桜、かわせみオールメンバーとビジュアル的にも創作意欲が湧く題材だったかな。
(あっちの管理人さんの談)

大川へ出て、上流へ竿をさし、櫓で漕ぎ上がる。
「若先生のおつれになった、可愛いお嬢さんにおみせしようてんで、深川の連中が堤の上で獅子舞の用意をしてます」
長助が向島の土手へ手を上げて、そこで賑やかな笛太鼓が始まった。
花姫は嬉しそうに見物している。 (略)
「泉州の春も美しいと思いますよ、花姫様の行かれるところ、春は必ず、美しい。何故なら、あなたは花の姫君ですからね」
それは、東吾にしても、せい一杯の願いでもあった。
「岸和田の姫」より
「岸和田の姫」で思い浮かぶのは、花姫が東吾さん、宗太郎先生をお供に大川から向島の花見を楽しんだ場面。
あんなお花見は生涯にたった一度かも知れないけれど、だからこそいつまでも花姫の心の中を桜色に染め続けるんだろうなと。
そんな春爛漫の桜をぜひ詠んでみたいなと思って作ってみました。
   
春霞 薄紅色の 夢の中
鳩笛に 幸せ願う 春の宵
   
春の日の ぬくもり胸に 嫁ぎゆく
嫁ぐ日の 瞼を染める 花吹雪
   

愛らしい花姫の行く末に、たくさんの幸せが待っていることを願わずにはいられませんね。できれば花姫のお輿入れのお話など、先生が書いて下さらないものでしょうか。
あっちの管理人さまのやさしさに感動。
(はなはなさん)



 はなはなさんの五七五 

このお話はただただ素直に花姫の行く末を寿ぎ、美しい思い出にして上げたくて。東吾さんに宗太郎さん、源さん、ホントにかっこいい。また、お江戸の春が余すところ無く描かれていて、本当に大好きです。
 (UP後に)
私はなかなか言えずに悶々としてしまって、拙いものをものするだけで終わりがちなので。どの句もステキでかっこいい。もっともっといろいろな方の作が読みたいですね。
(はなはなさんの談)

ここで、陽が暮れた。東吾は川風を思って、自分の着ている羽織を脱いで、花姫の背に着せかけた。 (略)
帰りの舟で、花姫は疲れたのか、東吾によりかかって、すやすやとねむってしまった。
冗談好きの宗太郎も、なにもいわず、ただ大川の流れをみつめている。
「岸和田の姫」より
   
花冷えの 肩に手をかけて 月を見る
とおき道 弥栄(いやさか)にあれ 花笑みの君
   

東吾さんも宗太郎さんも、できればいつまでも舟に乗せていてあげたかったことでしょう。限られた時であればこそ、思い出も美しいのですね。



「姫、東吾殿がお別れを……」
乗り物に用人が近づいて声をかけると、戸の向こうから、小さく叫んだ。
「開けないで……」
明らかに泣き声であった。
八丁堀から渋谷まで、駕籠の中の花姫は泣き通していたのだろうか。
   
花かげに 笑み涙こぼれて 別れけり



 E/Fさんの五七五 

私のような者の駄作を「参加して良いの?」と戸惑っておりました(大汗)でも、考える時間がとても楽しくなりました(笑)。今後とも宜しくお願いいたします。
(E/Fさんの談)
ヾ(≧▽≦)ノギャハハ☆(でもこれじゃあ短歌ですね。)
(ー'‘ー; )ウーム…。でも捻りがないなーー。
   
この思い桜とともに彼(か)の元へ届けと祈る淡き恋かな

花姫はどこにいても、桜を見るとお江戸の春と東吾さんを思い出すのでしょうね。でも多くの人の心には、桜とともに花姫の面影がうかぶことでしょう。



 千姫さんの五七五 

以前「かわせみの世界」の掲示板で、岸和田の姫は記憶にあるから数で勝負かな・な〜んて調子のいい事、書きましたが、物語が記憶にある=俳句が詠めるとは、考えが甘すぎました。
 (UP後に)
句を作るのは苦しいけれど、人の句を読むのは楽しいですね。たまこさんのおっしゃる通り、たった十七文字なのに別の句が出来るなんて不思議です。
それぞれ個性があって、○○さんって、 片思いの恋の最中かなー、な〜んて考えたりしています。何度も読んでいると色々な意味が見えてくるような気がして不思議ですね。これが俳句の深さなのかしら。
(千姫さんの談)
物語の最後の場面のような…泉州のお城の桜の咲く庭のような…これから花姫は、桜が咲けば江戸の町を思い出し鳩笛を吹けば東吾を想うのでしょうねぇ…
   
春の宵 東吾がほしいと 笛をふく


ラストの場面は、甘く・切なく・ほろ苦いシーンですね。新しい人生に向かっていこうとする決意をこめて、途切れながらも、笛を吹いて聞かせたのでしょうね。
花姫の素直で一途な気持ちや、無邪気さがよく伝わってきます。
(たまこさん)
千姫さまの作には心を衝かれました。ずはりと「東吾がほしい」といわれるとはっとします。
(はなはなさん)